日本消化器外科学会雑誌
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症例報告
膵頭十二指腸切除後の門脈圧亢進症に対して上腸間膜静脈分枝—下大静脈吻合術が奏効した1例
古橋 聡近本 亮田中 洋堀野 敬高森 啓史廣田 昌彦岡島 英明猪股 裕紀洋馬場 秀夫
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2009 年 42 巻 2 号 p. 210-214

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抄録

 症例は59歳の男性で,膵頭部癌に対して幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(門脈合併切除,術中照射併施)を受けた3年後より,吐血,下血を繰り返すようになった.上部,下部消化管内視鏡検査で,明らかな出血源は認めなかった.腹部血管造影X線検査においても明らかな出血部は認めなかったが,門脈本幹(吻合部周囲)が描出されなかった.門脈系の流れは停滞しており,側副血行路の形成も不良であった.以上より,門脈閉塞による静脈性出血が消化管出血の原因と考えられた.根治的治療として,上腸間膜静脈分枝—下大静脈バイパスによる減圧術を施行した.術後1年経過したが,消化管出血は認めていない.膵頭十二指腸切除術における門脈合併切除例の晩期合併症として,本例のような再建部門脈閉塞による繰り返す消化管出血が起こりうる.本病態に対する治療法として,上腸間膜静脈分枝—下大静脈合術は効果的な治療法と考えられた.

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