日本消化器外科学会雑誌
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症例報告
繰り返す膵炎,胆管炎後に発症した膵管内乳頭粘液性腺癌,胆管癌,胆嚢癌による同時性3重複癌の1切除例
高梨 秀一郎鈴木 一也諸原 浩二保田 尚邦神坂 幸次鈴木 豊清水 喜徳村上 雅彦
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2012 年 45 巻 2 号 p. 183-190

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抄録

 膵管内乳頭粘液性腺癌(Intraductal Papillary-Mucinous Carcinoma;以下,IPMCと略記),下部胆管癌,胆嚢癌による3重複癌に対し根治術を施行した1例を経験した.症例は82歳の男性で,膵炎,胆管炎による入院歴が6回あった.今回,発熱,左季肋部痛を主訴に来院し,腹部CT,ERCPで下部胆管癌およびIPMCと診断し幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.摘出標本からは術前に診断しえなかった胆嚢癌も伴っており,3重複癌と最終診断された.これまでIPMCと胆道癌との重複例は報告がみられるが,下部胆管癌,胆嚢癌との3重複癌はみられなかった.また,本症例は繰り返す膵炎,胆管炎が膵管内乳頭粘液腫瘍(IPMN)の発生とIPMCへの進展,さらに他臓器癌の新たな発生に関与した可能性が示唆された興味深い1例であった.

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