日本消化器外科学会雑誌
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直腸癌における肛門側壁内進展に関する検討
長谷 和生望月 英隆横山 幸生吉村 一克山本 哲久中村 栄秀栗原 浩幸吉積 司上野 秀樹岩本 一亜玉熊 正悦
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1992 年 25 巻 12 号 p. 2944-2950

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抄録

直腸癌手術症例297例のホルマリン固定標本を対象に, 癌の肛門側壁内進展について検討した.壁内進展は67例, 23%に認められ, その最長距離は3.7cmであった.壁内進展陽性例は陰性例に比べ治癒切除率 (34%: 77%; p<0.005), 治癒切除例における再発率 (57%: 25%; p<0.005), 累積生存率 (p<0.001) など, いずれも有意に不良であり, 壁内進展には予後規定因子としての意義がうかがわれた.一方癌の肉眼型3型, 低分化腺癌・印環細胞癌, 大きさ6.1cm以上, 亜全周以上などの病理学的所見を呈するものでは, 2.1cm以上の壁内進展がそれぞれ高率に認められた (おのおのp<0.005), これら4因子のうち1因子以下しか伴わない症例では2.1cm以上の進展は皆無であったが, 2因子以上を伴う症例では11%に認められた (p<0.005).したがってこれらの病理学的因子を2因子以上有する症例では肛門側切離縁までの距離はホルマリン固定標本上4.0cmが望ましく, 1因子以下では2.0cmで十分と考えれれた.

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