日本消化器外科学会雑誌
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広範な小腸壊死を伴った閉塞性大腸炎の1例
福田 淑一月岡 一馬川崎 史寛松尾 吉郎吉村 高尚山崎 修大谷 博
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1996 年 29 巻 3 号 p. 780-784

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抄録

症例は51歳の女性. 突然の腹部膨満で発症し約6時間でショックに陥った. 腹部は極度に緊満し直腸診で多量の便塊を触知. CTで腸間膜静脈内にガス像を認めたため緊急開腹した. S状結腸から回盲弁を越えさらに280cm口側の空腸までの腸管が壊死に陥っていた. 直腸は便塊で充満. 閉塞. この閉塞部口側端と壊死に陥ったS状結腸との間に約15cmの健常腸管がみられた. 術中腸間膜動静脈の血行障害はなかった. 壊死腸管を全切除し空腸瘻およびS状結腸瘻を造設. 術後20日目に経口摂取を開始し外科病棟へ転棟. 回盲弁を越え回腸まで広範囲に壊死がみられた激症型閉塞性大腸炎は今までに2例報告されているが空腸にまでおよんだものはなく自験例は本邦初例と思われる. 自験例では糖尿病性の細血管病変による慢性的な乏血状態が基礎にあって, そこに大腸で増殖した病的細菌が-気に空腸まで逆流し毛細管レベルで電撃的にvasoconstrictionが発生し“激症化”したと考えられた

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