大腸原発の悪性腫瘍は肛門, 直腸下部を除くとほとんどが腺癌であり, 扁平上皮成分を有する腫瘍はまれである. 上行結腸に原発した扁平上皮癌を経験したので報告する.
症例は60歳の男性で, 腹痛を主訴とし, 精査にて肝転移を伴う上行結腸腫瘍と診断, 姑息的結腸右半切除術を施行した. 病理組織診断では腺管形成を認めず, 低分化扁平上皮癌であった. 結腸原発の腺癌成分を含まない扁平上皮癌はSchmidtmann (1919) の報告以来, 検索しえた限り40例にすぎない. 結腸癌における扁平上皮癌は腺癌に比べて予後不良であり, 有効な治療法がないのが現状である.