日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
Print ISSN : 0386-9768
ISSN-L : 0386-9768
膵管狭窄を伴った膵漿液性嚢胞腺腫の1例
山中 秀高小野 要佐藤 達郎瀬古 浩
著者情報
ジャーナル フリー

2005 年 38 巻 10 号 p. 1590-1595

詳細
抄録

膵漿液性嚢胞腺腫は良性腫瘍で膵管浸潤はないが圧排により狭窄を来すものがあり, 悪性腫瘍との鑑別が困難な場合がある.今回, 我々は膵管狭窄を来した1例を経験したので報告する.症例は55歳の女性で, 近医より食思不振と高アミラーゼおよび高CEA血症を指摘され受診した.血液検査成績でAMY 798IU/l, CEA 8.4ng/mlと高値を認めた.腹部CT およびMRI所見で径1cm大の膵体部腫瘤を認め, ERCP所見で腫瘤部の膵管狭窄を認めた.腹部血管造影検査所見で異常はなかった.膵体部腫瘍と診断し, 膵癌も否定できず, 脾合併尾側膵切除術を施行した.摘出標本上, 漿液性小嚢胞を伴う10×12mm大の白色充実性腫瘍で, 病理組織で膵管を圧排狭窄するが浸潤はなく, 漿液性嚢胞腺腫と診断された.狭窄例は非狭窄例より膵頭体部に多く随伴性膵炎を伴うため, 若年で腫瘍径が小さいうちに発見されるが, 質的診断が困難で術前に悪性と診断されるものが多かった.

著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top