日本植物病理学会報
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オオムギおよびコムギ縞萎縮ウイルスの純化および血清学的関係について
宇杉 富雄斎藤 康夫
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1976 年 42 巻 1 号 p. 12-20

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抄録

1. BYMVおよびWYMVを四塩化炭素処理,分画遠心および蔗糖密度勾配遠心により純化することができた。2. 純化に用いる緩衝液の種類,濃度を検討した結果,本ウイルスは0.1Mクエン酸緩衝液(pH 7.0)にはよく溶解したが,0.1Mリン酸緩衝液(pH 7.0), 0.005Mホウ酸緩衝液(pH 9.0), 0.1M酢酸緩衝液(pH 5.0)および0.01Mクエン酸緩衝液(pH 7.0)では不溶か,または凝集した。
3. 本ウイルスは四塩化炭素に耐性であったが,クロロホルム,ブタノールでは失活した。
4. 蔗糖密度勾配遠心後,BYMV, WYMV共に明瞭な2本のzoneが認められた。top zoneは主として短粒子より,bottom zoneは長短両粒子より成立っていた。
5. 塩化セシウム密度差勾配平衡遠心によってさらに純化をすすめることができた。BYMV, WYMVの実効密度は1.294および1.281g/cm3であった。この標品の紫外部吸収はいずれも265-270nmに吸収極大を有し,さらに290nm付近にshoulderを示した。光散乱補正後の280nmと260nmの吸光度比はいずれも0.88で核酸含量は約5%と推定された。
6. 各段階の純化標品の感染性を調べた。分画遠心後の感染性は急激に低下した。しかし,これに健全汁液を添加すると感染性の回復が認められた。蔗糖密度勾配遠心後のbottom zoneおよびtopとbottom zoneの混合の感染性は,top zoneよりも高かった。塩化セシウム密度差勾配平衡遠心による純化標品は,いずれも高い感染性が認められたが,分画後,高塩濃度下で一夜,4Cに放置したBYMVは失活した。
7. 分画遠心3回後の部分純化標品を用いてウイルス粒子の長さの分布を調べた。BYMV, WYMV共に200-300nmおよび600nmに分布のピークが認められたが,800nm以上の粒子も若干検出された。
8. Dip法によるウイルス粒子の長さの分布はBYMV, WYMV共に275-300nm, 530-560nmおよび770-820nmに分布のピークが認められ,それ以上の長さの粒子も高頻度に検出された。
9. BYMV, WYMVの抗血清を作成した。健全成分吸収後の抗血清の力価は,補体結合反応でいずれも640倍であった。BYMV, WYMVおよびRNMVの間に血清学的に差があるが,共通抗原の存在が認められた。しかし,SBWMVとの関係は認められなかった。

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