2007 年 68 巻 1 号 p. 62-66
症例は75歳, 女性. 右乳房腫瘤の精査加療目的にて来院. 術前検査にて右乳房腫瘤は乳癌と診断した. また胃潰瘍治療中であったため内視鏡検査を行ったところ, 体上部に約5cm大の潰瘍性病変を認めた. 生検では診断できなかったが, 胃原発悪性リンパ腫を疑い, 右乳房切除と同時に胃全摘術, 脾合併切除術を行った. 胃病変は粘膜下に広がっており全径12×10.5cmで, さらに体中部前壁漿膜面に径4.5×4cmの白色扁平隆起があり, 乳腺腫瘤径は2.5×2.3cmであった. 病理診断は, 各病変ともにdiffuse mixed type NHL, peripheral T cell lymphomaと診断された. 胃所属リンパ節および腋下リンパ節に転移は認めなかった. 他院にて化学療法を施行した. 術後9カ月目右胸壁と肝に再発したが, 高容量化学療法にて寛解した. 術後3年10カ月目の脳髄膜腫術後にMRSA感染による敗血症にて死の転帰をとるまで, 再発は認めなかった.