症例は93歳の女性. 80歳時に胃穹窿部に8mm大の胃粘膜下腫瘍 (以下SMT) を指摘されたが87歳時まで大きさに変化を認めず, それ以降の精査は拒否されていた. 食欲不振, 黒色便を認めたため来院し, 上部消化管内視鏡検査 (以下GIF) を施行したところ穹窿部のSMTは50mm大と著明に増大していた. 外科的治療は拒否されたため経過観察していたが, 1カ月後に摂食が困難となり腹痛が出現した. GIFにて穹窿部のSMTが十二指腸球部に陥入しており, 内視鏡の通過は可能であったが内視鏡的整復は不可能であり, 開腹下に整復し穹窿部の胃局所切除を施行した. 病理組織学的所見では粘膜下から筋層に紡錘型で細胞密度の高い腫瘍細胞を認め, 免疫染色ではc-kit, CD34ともに強陽性であり, SMAおよびS-100は陰性であった. 細胞増殖能を示すKi-67は2%と低値であり組織学的には低リスクのgastrointestinal stromal tumor (GIST) と診断した. 術後1年目の現在, 再発を認めない.