抄録
症例は79歳,男性.狭心症状出現し,冠動脈造影検査で冠動脈病変の進行を認めたため手術となった.手術は非体外循環下冠動脈バイパス術1枝(左内胸動脈-前下行枝)を施行した.術後は一過性心房細動が時々発生していたが特に血行動態は異常なくリハビリも順調に進んでいた.術後10日目,術後心エコー検査を施行したところ経食道エコーで右心房内に三尖弁に接して浮遊する棒状血栓を認め,右心房内血栓と診断.右心負荷所見は認められなかったが肺血栓塞栓症を考慮し,緊急に血栓溶解療法を開始した.MD-CTでは右肺動脈内に小血栓が散在していた.心エコー検査でフォローを続け,溶解療法8日目の経食道エコー検査で右心房内血栓消失,MD-CT施行で肺動脈内血栓消失を確認した.術後49日目軽快退院となった.本症例のような潜在的な術後の肺血栓塞栓症は術後の非特異的な症状ということだけで見落とされている可能性もある.