2008 年 69 巻 10 号 p. 2702-2707
総肝動脈神経叢由来の後腹膜神経鞘腫の1例を経験したので報告する.症例は63歳,男性.発熱,蕁麻疹を認め前医受診後,内服にて蕁麻疹は消失したが発熱は続いた.精査目的で腹部CTを施行した結果,門脈,膵頭体部背側に直径50mmの境界明瞭な充実性腫瘤を認めた.胆汁鬱帯による胆管炎の診断で抗生剤投与され解熱後,今後の治療方針相談で当科紹介受診した.MRI検査では,T1強調像にて低信号,T2強調像にて高信号の腫瘤として認め,FDG-PETではFDGの軽度集積を有する腫瘤であった.以上より,後腹膜神経鞘腫を念頭に開腹手術を施行した.術中迅速病理で神経鞘腫と診断されたが,腫瘤は下部胆管と強固に癒着,剥離困難で下部胆管合併腫瘤摘出術を行った.手術所見より総肝動脈神経叢由来の神経鞘腫と考えられた.病理組織学的所見は良性神経鞘腫,Antoni A,B混合型であった.術後6カ月経過したが,再発徴候は認めていない.