2008 年 69 巻 8 号 p. 2058-2062
症例は79歳,女性.平成17年1月横行結腸浸潤を呈する左腎細胞癌に対し左腎摘出術+結腸・脾・膵尾部合併切除を施行した.平成18年5月大量下血にて当院紹介受診となった.下部消化管内視鏡では下行結腸に内腔をほぼ閉塞し,表面壊死を伴う1型腫瘍を認め,生検では確定診断は得られなかった.CTでは下行結腸に内腔を占める造影効果のある腫瘤と左肺下葉に2cm大の腫瘤影がみられた.肺転移を伴う出血性大腸癌疑いと診断し,下行結腸切除術を施行した.組織検査にて内視鏡で確認できた1型腫瘍とさらに口側に粘膜下腫瘍を認め,どちらも腎癌の大腸転移と診断された.腎細胞癌の消化管転移は比較的稀であり,若干の文献的考察を加え報告する.