2009 年 70 巻 3 号 p. 691-696
膵癌は術後再発率の高い予後不良な疾患である.膵癌術後の肺転移に対して切除術を施行した2例を経験したので報告する.症例1は75歳男性で膵体部癌に対して膵体尾部切除後48カ月で胸部異常陰影を指摘された.原発性肺癌の診断で右下葉切除を施行したが,術後5カ月で右上葉に再び腫瘤が出現し上葉部分切除を行った.免疫組織学的検討の結果,両病巣とも膵癌の肺転移と診断された.多発肺転移,腹膜播種をきたし肺転移切除後37カ月で永眠された.症例2は81歳男性で膵頭部癌に対して幽門輪温存膵頭十二指腸切除後51カ月で胸部異常陰影を指摘された.原発性肺癌の診断で右下葉切除を施行した,免疫組織学的検討にて膵癌の肺転移と診断された.術後6カ月現在無再発生存中である.膵癌術後に腹腔内臓器転移や腹膜播種を伴わず肺転移をきたし,それに対して切除術を施行された症例は稀であり報告する.