抄録
症例は74歳,女性.特に基礎疾患は無く,2003年の検診で右中肺野の異常陰影を指摘され,他医にて経過観察とされた.2年後の胸部X線で陰影の増大を指摘されたがその間,自覚症状はなかった.胸部CTでは右中葉内に6×5cm大の嚢胞性腫瘤を認めた.気管支鏡生検では確定診断がつかず,培養検査でも一般細菌,真菌,抗酸菌はすべて陰性であった.2005年11月に右中葉の大部分を占める嚢胞性病変に対し,右肺中葉切除を行った.病理組織所見では嚢胞壁内腔は気管支上皮で覆われ,嚢胞内容物には壊死組織と,隔壁を有さず直角に分枝する菌糸を認め,その特徴から菌球型肺ムコール症と診断された.嚢胞壁には気管支軟骨を含むことから嚢状に気管支拡張を伴って感染を起こした可能性が示唆された.術後2年を経過しているが再発を認めていない.