2011 年 72 巻 1 号 p. 190-193
症例は47歳の女性であった.当院婦人科での子宮筋腫に対する子宮全摘術の際に偶然みつかったダグラス窩腫瘤の精査のため,術後に当科へ紹介となった.腫瘤の術中組織生検により明細胞腺癌が疑われた.内視鏡で直腸に粘膜面の潰瘍を伴う粘膜下腫瘍として認め,MRIでは直腸浸潤を伴う限局性腫瘤として検出された.腹膜原発悪性腫瘍の診断のもと開腹したところ,周囲への浸潤が高度で内腸骨リンパ節腫脹を認めたので,膣部分切除,両側卵巣切除および両側側方郭清を含む低位前方切除術を施行した.免疫染色による検討の結果,腹膜悪性中皮腫と確定診断された.本症が粘膜下腫瘍像を呈することは稀である.さらに,本症例の如く腺癌との鑑別が問題となることがあり,留意されるべきである.