全日本鍼灸学会雑誌
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関節リウマチに対する鍼灸治療の果たす役割
関節症状の改善とQOL向上について
山本 一彦三村 俊英赤尾 清剛吉川 信粕谷 大智山口 智
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2003 年 53 巻 5 号 p. 626-634

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抄録

我々は関節リウマチに対する鍼灸治療の有効性と有用性および安全性を、外来にて薬物療法を行っている群を対照とした多施設ランダム化比較試験により検討した。鍼灸臨床研究において重要なendpoint (評価項目) は、ACRコアセットによる改善基準と、RAのQOL評価法であるAIMS-2日本語版を用いた。介入 (治療法) については関節リウマチの病期別に患者の活動性や機能障害を考慮しながら局所と全身の治療を行えるように病期別治療法チャートを作成し、患者の病態に応じて統一した治療法にした。結果1.症例の収集についてはA群 (薬物療法群) 80例 (女性80例、男性2例) 、B群 (鍼灸治療併用群) 90例の計170例が解析の対象となった。2.ACRコアセット改善基準 (ACR20) を満たしている症例 (改善例) は、A群80例中8例、B群90例中20例で、2×2カイニ乗検定よりP=0.04で両群間において有意差を認め、鍼灸併用群の方が有意に改善を示した。3.AIMS-2質問紙によるQOL変化は12ヶ月時点で両群間においてP=0.001と有意差を認め、鍼灸併用群の方が有意に改善を認めた。4.AIMS-2質問紙の各項目の変化=両群間で有意に鍼灸併用群に改善を認めた項目は歩行能、手指機能、家事、社交、痛み、気分、自覚改善度であった。今回、多施設ランダム化比較試験において鍼灸併用群で上述の項目において有意に改善を認めたことは、従来の治療に鍼灸治療を併用することで身体機能低下を予防し、血行改善や精神的安定も得られ、関節リウマチ患者のQOL向上に寄与することを示唆している。

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