日本透析医学会雑誌
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糖尿病性腎症患者へのHPMダイアライザーの適応について
抗血栓性の観点から
久米井 和彦太尾 泰雄井上 和彦田島 義雄横瀬 誠治
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1994 年 27 巻 3 号 p. 175-180

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抄録
各種high permeable membrane (HPM) ダイアライザーの糖尿病性腎症患者への適応について, 抗血栓性の観点から比較検討した. 評価ダイアライザーはPS-1.3 UW (PS), FB-130 U (CTA), EL-201-1200 C (EVAL), PAN-13 DX (PAN), TF-1100 PH (CE), BK-1.0 U (PMMA) とし, 対象糖尿病性腎症患者4名にそれぞれ1回ずつ使用して各指標について検討した. 血清中トロンビン-アンチトロンビンIII複合体 (TAT) の透析前後の変化は, 膜間での有意差は認められなかったが, PS, EVAL, PMMAでの透析前後比は比較的高値を示した. フィブリノペプタイドA (FPA) の透析前後の変化は, PMMAで他の膜に比べ高値であった. CE, PAN, CTAでは, 両指標とも比較的変化は少なく, これらの膜は凝固系への影響が比較的小さいと考えられた. 透析終了後の透析膜付着蛋白量に関して, PMMAは他の膜に比べ有意に高値を示し, CTAはPSを除く他の膜に比べ有意に低値を示しPAN, CE, EVALとの間で有意に低値を示した. 膜付着LDH量は, PMMAでCEを除く他の膜に比べ有意に高値を示した. 透析使用後の各種透析膜の内表面の走査電子顕微鏡写真観察の結果, PMMAおよびCEでは血球成分の付着が観察され, EVALでは若干のフィブリン様物質の付着が認められた. 以上, 抗血栓性に関する種々の指標を検討した結果, 今回検討した6種類のHPMダイアライザー間では, CTAとPANが比較的抗血栓性に優れていると考えられた.
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© 社団法人 日本透析医学会
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