日本透析医学会雑誌
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動脈塞栓術が奏効した遅発性脾破裂の1透析例
高野 隆一飯野 聡花田 麻紀草野 英二浅野 泰本多 正徳古瀬 信安田 是和
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キーワード: 血液透析, 遅発性脾破裂
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1996 年 29 巻 7 号 p. 1177-1181

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抄録

症例は67歳, 男性. 昭和42年 (40歳時) 慢性糸球体腎炎と診断され, 昭和56年4月29日 (54歳時) より維持血液透析を施行されていた. 昭和62年9月に左内腸骨動脈瘤破裂の既往がある. 平成6年4月7日午後4時, 納屋の2階より落下し, 左第7・8肋骨を骨折し保存的に加療されていた. 受傷時の腹部CTは施行されていない. この間血液透析時の抗凝固薬は, 低分子ヘパリンが使われていた. 血液透析翌日の4月29日, 左背部の激痛が出現し前ショック状態となり緊急入院となった. 腹部CT施行したところ, 肝周囲腹腔内にみられる液体貯留像と脾の腫大および脾内のlow density areaを認め, 脾破裂が疑われ緊急血管造影施行. 出血部位確認後, transcatheter arterial embolization (TAE) 施行し止血を確認した. 塞栓術後, 疼痛の再発, 貧血の進行を認めず, 1年後の腹部CTにても異常所見は認められていない. 本症例は透析患者に発症した遅発性脾破裂の最初の報告であり, TAEが有効で, 脾を温存し得た.

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