日本透析医学会雑誌
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慢性維持透析患者の妊娠出産の1例
適正ドライウェイト設定についての検討
阿部 みと今井 はるみ佐藤 利枝子高橋 満知子石川 正明政金 生人柿崎 弘
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1996 年 29 巻 7 号 p. 1171-1176

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抄録
維持透析患者で高齢初産である症例の妊娠, 出産を経験したので報告する.
症例は透析歴12年, 37歳, 平成6年4月25日を最終月経として妊娠した. 妊娠9週で切迫流産のため入院し, 本人の挙児希望が強く妊娠継続に踏み切った. 透析患者の妊娠の合併症に挙げられる羊水過多, 胎児発育不全を防止するため, 透析のスケジュールとドライウェイトを調整した. 透析前BUN 50mg/dl以下, Cr 7mg/dl以下におさえるために, 透析時間を妊娠9週から週6回4時間に増やした. 心臓超音波検査で左心房径を測り体格指数で標準化した値 (LAD/BMI), ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド (HANP), 上腕周囲径と皮下脂肪厚の測定を行い, 適正ドライウェイトを設定した. 妊娠を支援する体制として, 透析, 産婦人科, 小児科間のスタッフミーティングを定期的に行った. 十分な透析と適正ドライウェイト設定にもかかわらず, 妊娠20週から羊水過多や胎児発育不全が出現した. 妊娠31週に妊娠中毒症を併発し, 帝王切開で1,484gの女児を出産した.
透析患者の妊娠は, 羊水過多, 体格の変化, 胎児発育不全, 妊娠中毒症等の要因で適正ドライウェイトを設定することが困難である. LAD/BMI, HANP, 体脂肪量等を多角的に評価して適正ドライウェイトを設定することが, 慢性維持透析患者の妊娠に際しては必要と思われた.
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© 社団法人 日本透析医学会
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