抄録
症例は 22歳,男性.心疾患既往,突然死家族歴ともになし.大学構内でアメリカン・フットボール練習中に心肺停止となり救急要請後,自動体外除細動器(AED)にて蘇生された.心電図,心エコー,心臓 MRIはほぼ正常であり,冠動脈 CTでも特記すべき病変なし.電気生理学的検査では致死性不整脈は誘発されず,ピルジカイニド負荷試験も陰性であったが,electroanatomical(CARTO™)mappingで右室流出路に低電位領域を認め,心室遅延電位も陽性を示した.スポーツ種などからは心臓震とうが考慮されたが,不整脈原性右室心筋症をはじめとする心疾患も完全には否定できず,本人・家族の希望もあり植込み型除細動器(ICD)移植の方針とした.その後1年半の経過観察で,計 4回の ICD適正作動を認めている.本症例は運動中の突然死予防,AED設置拡充および競技関係者への心肺蘇生法普及を考えるうえで種々の示唆に富むと思われる.