抄録
脳梗塞発症早期に高度高血圧を呈した症例の臨床的検討を行った. 対象は発症2日以内の脳梗塞連続300例 (男性176名, 女性124名, 平均年齢73歳). 高度高血圧群は55例 (18%) に認められた. 心原性塞栓症 (36.4%) が多く, 梗塞巣はテント上皮質枝領域 (54.6%) に多く認められた. 高度高血圧群と非高度高血圧群の比較検討では, 年齢, 性差, 糖尿病, 高脂血症, 心房細動, 虚血性心疾患, 脳卒中既往, 大脳白質病変, 死亡率に有意差はなかった. 高度高血圧群では高血圧既往, 腎疾患既往, 頚動脈狭窄が有意に高かった. 入退院時転帰 (modified Rankin Scale [mRS] スコア) でも有意に高かった. ロジスティック回帰分析では高血圧既往を除く因子で解析すると糖尿病既往がオッズ比2.29で高度高血圧の有無に対する独立した因子であった. 今回の結果より高度高血圧群は臓器障害が進行しており, 予後不良因子と成り得ることが示唆された. 臨床病型や既往歴・合併症別によりきめ細かな血圧管理を行う必要があると考えられた.