北関東医学
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症例報告
Whirl signを認めなかった原発性小腸軸捻転症の1例
山田 達也宮前 洋平北原 信介小川 晃山崎 穂高中村 正治竹吉 泉
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2009 年 59 巻 3 号 p. 269-273

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抄録

 症例は38歳, 未婚女性. 突然に発症した強い腹痛で救急搬送された. 既往歴に特記事項無し. 腹部造影CTで, 中等量の腹水と骨盤内小腸の拡張像を認めた. 絞扼性腸閉塞症と診断し, 迅速に緊急手術を施行した. 900mlの血性腹水を認め, 小腸が小骨盤内で時計回りに180度捻転し, Treitz靱帯から180cm~400cmの腸管が壊死に陥っていたため, 切除を余儀なくされた. 癒着, 索状物, 腸回転異常などの二次的要因を認めず, 原発性小腸軸捻転症と診断した. 術後の検証で, 術前CTでは原発性小腸軸捻転症に特徴的とされる腸間膜の渦巻き像 (whirl sign) を認めず, 一方で腸間膜の放射状の引きつれ像 (radial distribution) を認めた. 術後経過は良好で, 短腸症候群の症状もなく, 第17病日に軽快退院した.
 二次的要因によらない, 成人の原発性小腸軸捻転症は, 本邦ではまれな疾患である. 捻転角度が小さい場合, 特徴的なCT所見であるwhirl signを示さない場合もあることを示す点で, 貴重な症例と思われた.

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© 2009 北関東医学会
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