2021 年 52 巻 3 号 p. 123-132
超高精細CTとスペクトラルCTは注目の最新CT技術である。超高精細CTは従来に比し空間分解能が大幅に向上し,微細な構造物の描出を改善できる。側頭骨CTでは中耳・内耳疾患の診断や治療法の選択,胸部CTではすりガラス濃度結節の評価,仮想気管支鏡検査などに有用である。逐次近似再構成を併用したCT angiographyでは脳動脈穿通枝などの描出能を向上できる。深層学習再構成を併用した腹部・骨盤CTでは低線量撮影でも微細病変を十分検出できる。スペクトラルCTは様々なエネルギーレベル(keV)の仮想単色X線画像,多様な物質弁別画像,実効原子番号画像などを取得でき,通常CTを超える多くの情報が得られる。低keVの仮想単色X線画像は造影効果の向上,造影剤量の合理的低減に有用である。また,スペクトラル曲線により通常CTを超える物質弁別が可能である。造影CTのヨード強調画像は組織灌流の評価,嚢胞と充実性腫瘍の鑑別などに有用である。心筋遅延造影CTでは心筋梗塞や線維化の検出能が改善し,不整脈起源の同定,心筋症の鑑別診断などに有用である。ヨード抑制画像は真の単純CTの代用となりうる。仮想カルシウム除去画像はMRIのように骨髄浮腫などを鋭敏に検出できる。実効原子番号画像は尿路結石の詳細な成分分析などに役立つ。杏林大学放射線科では,以上の臨床応用を積極的に行い,より良い医療の実践に努めている。