日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
パークロルエチレン慢性暴露者における尿中代謝産物測定法の改良及び検診と大腸腸管嚢腫様気腫症についての考察
栗原 陽一横木 和弘鈴木 秀和田 敏正猪狩 弘之小原 勝敏五十嵐 勤吉田 浩粕川 禮司佐藤 政男長井 靖河原田 保佑
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1986 年 83 巻 8 号 p. 1455-1460

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抄録

トリクロルエチレン (Trichloroethylene, 以下TE) 暴露と大腸の腸管嚢腫様気腫 (Pneumatosis Cystoides Coli, 以下PCC) との間の因果関係を解明する目的で以下の検討を行つた. TEの慢性低濃度暴露による, と考えられた自験PCC症例3例のうちの1名が勤務する従業員63名の作業所で, 42名(男23名, 女19名)から採尿して, TEの尿中代謝産物である三塩化酢酸(Trichloroacetic Acid, 以下TCA)を測定した. 測定にあたつては, 従来の方法に一部改良を加えた. この作業所ではPCC患者が発生したために, TEを中止し, パークロルエチレン (Perchloroethylene, 以下PE) を使用しはじめてから, 約8カ月が経過していたが, このような暴露条件の変更にもかかわらず, 検診者全員の尿中TCAが陽性(平均2.4mg/l, コントロール平均0.2mg/l)であり, そのうち, TCA有害下限値である3mg/lを上まわる者が12名に見られた. 上記PCC患者 (症例1) は6.7mg/lと検診者中2番目の高値を示した.

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