抄録
急性肝炎患者のインスリン受容体の変動を明らかにするため, 赤血球を用いてインスリン受容体特異結合率を測定し, 肝細胞障害度を示す生化学的な指標や血中インスリン濃度との関係を検討した. インスリン受容体特異結合率は健常者に比べて有意に低下しており, この低下は受容体数の減少によることが示唆された. また, インスリン受容体特異結合率とヘパプラスチンテストとの間には正の相関を認めたが, 血中IRI濃度との間には相関を認めなかつた. 以上より, 急性肝炎時にみられる赤血球インスリン受容体特異結合率の低下は, 高インスリン血症時の down regulation に起因する可能性は少なく, 肝細胞障害度と関連をもつ別の機序による可能性が示唆された.