日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
治療に難渋した糞便性イレウスによる閉塞性大腸炎・小腸炎の1例
生方 英幸田崎 太郎本橋 行片野 素信春日 照彦田渕 崇文
著者情報
ジャーナル フリー

2003 年 64 巻 2 号 p. 394-398

詳細
抄録

開腹歴のない絞扼性イレウスの診断にて緊急手術を行い,併存する閉塞性大腸炎・小腸炎のために治療に難渋した症例を経験したので報告する.症例は51歳,女性.腹部全体の疼痛を主訴に来院. 1週間前より便秘を自覚していた.汎発性腹膜炎所見あり,開腹すると糞便性イレウスであり,糞便塊によるS状結腸壊死を認め,下行結腸にて人工肛門造設.術後腹膜炎症状遷延のため再開腹.下行結腸,回腸に壊死を認め,閉塞性大腸炎・小腸炎の合併と診断.壊死腸管切除後横行結腸瘻,回腸瘻造設.術後はCHDF, PMXなどにより回復し,約10カ月後に結腸瘻,回腸瘻閉鎖術施行した.閉塞性大腸炎は癌が原因疾患であることがほとんどで,自験例のように糞便性イレウスが原因である症例は極めて稀である.また,閉塞性小腸炎の合併も非常に稀で貴重な症例といえる.閉塞性大腸炎・小腸炎の正確な術中診断は困難で,術後の厳重な経過観察が最も重要である.

著者関連情報
© 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top