2003 年 64 巻 4 号 p. 928-931
症例は51歳,女性.腹部膨満感があり近医を受診し,下腹部正中に新生児頭大の硬い腫瘤を指摘された. CT, MRIで臍上部から骨盤内の子宮底部にまで至る大きさ18×12cmの内部不均一な腫瘍を認めた.腸間膜あるいは卵巣や後腹膜など由来の腫瘍と診断し,手術を施行した.腫瘍は表面凹凸不整で硬く, S状結腸間膜を腹側から背側へと貫くように存在し,子宮や腸管との連続性はなかった.腫瘍とS状結腸の一部を切除した.腫瘍は大きさ18×12×10cmで,白色調で内部に出血壊死を認めた.病理組織学的検査で腫瘍は紡錘形の異型細胞が充実性に増殖し,免疫染色でsmooth muscle actin (以下SMA)陽性, c-kit, S-100陰性で, S状結腸間膜から発生した平滑筋肉腫と考えられた.自覚症状が軽度な腹部腫瘤を見た場合には腸間膜平滑筋肉腫を念頭に置く必要があると考えられた.