日本臨床外科学会雑誌
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64 巻 , 4 号
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  • 井上 善文, 木村 聡宏, 野呂 浩史, 吉川 正人, 藤田 繁雄, 弓場 健義, 曹 英樹, 野村 昌哉, 宗田 滋夫, 松田 暉
    2003 年 64 巻 4 号 p. 769-777
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    結腸切除術症例に対し,術翌日より水分を摂取し,術後2日目から半消化態栄養剤LRDを飲用するという術後管理を行い(LRD群, n=30), TPNによる栄養管理(TPN群, n=30)と,栄養治療効果,術後の回復,安全性の面から比較検討した.栄養指標の変動には差がなかった.初回排ガス,排便までの期間,在院日数(LRD: 14.2±3.8日, TPN: 21.5±4.8日, p>0.05)はLRD群で有意に短縮していた.管理法完遂率はTPN群93.3% (カテーテル敗血症2例), LRD群86.7%(縫合不全,イレウス各1例,味などの問題で飲用不能: 2例)で,合併症発生頻度には差がなかった.術後のCRP値は両群間に差がなかったが,術後7日目の血漿IL-6値(LRD: 4.2±2.42pg/ml, TPN: 10.8±6.23pg/ml, p<0.05)はTPN群で有意に高値に留まった.術後早期からのLRD飲用による栄養管理法は,栄養治療効果の面ではTPNと同等で,腸管機能の回復期間は有意に短く,手術侵襲からの回復という面でも有利であることが示唆された.
  • 有賀 浩子, 湯口 卓, 千須和 寿直, 大森 敏弘, 田内 克典, 小池 秀夫
    2003 年 64 巻 4 号 p. 778-784
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    当院では医療の標準化・業務の効率化・医療の質の向上・入院日数の短縮を目的として全科的にクリニカルパスを導入し,その有効性について検討したので報告する.対象は乳癌症例で, 2000年4月から2001年3月までの導入前14症例と2001年4月から2002年3月までの導入後25症例とした.医療の標準化を徹底するため,従来の漫然とした医療行為は削除され,早期離床・早期退院を促すことが可能になった.入院オーダーを疾患毎に統一してオーダリングシステムからパス表を作成し,必要な医療行為をもれなく確実に行い,患者に対してはパス表を用いて入院後の治療内容と経過の説明を行いインフォームドコンセントの充実を計った.パス導入後は在院日数は短縮し,総医療費は減少したが1日あたり医療費は増加した.更に病床利用率は一時的に下がったものの回転率は上昇し全身麻酔手術件数も増加し収益にも有効であった.現在の厳しい医療業界においてパス導入は有効と考えられた.
  • 山口 正秀, 山根 哲郎, 中島 晋, 田中 宏樹, 菅沼 泰, 岡野 晋治, 北井 祥三, 中川 登, 上野 満久, 竹田 靖, 神谷 匡 ...
    2003 年 64 巻 4 号 p. 785-790
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    近年,増加傾向にある消化器癌術後の肺動脈塞栓症について,当院における本症の検討と予防法と効果を検討した. 1996年1月より2001年1月の5年間で胃,大腸癌の手術後の肺動脈塞栓症を8例経験した.症例の年齢は48歳から84歳までで,男性2例と女性6例であった. 20%以上の肥満を認めたのは3例のみであった.術式は3例は直腸切断術, 4例は胃亜全摘術であった.治療は7例で抗凝固療法を行い, 3例に下大静脈フィルターの留置が必要であった. 1例のみ治療経過中確定診断ができず,死亡例となった.消化器癌術後肺動脈塞栓症の原因は,種々考えられるため,症例ごとに術前に完全に肺動脈塞栓症が発症するか否かを判断するのは困難であり,肺動脈塞栓症の予防が最も重要で効果的治療と思われる.ストッキング使用前後の時期ごとの患者背景には統計上有意差はなく,明らかに肺動脈塞栓症の発症頻度が低下しており,弾性ストッキングは,その予防に有効と考えられた.
  • 諸冨 嘉樹, 大野 耕一, 中平 公士, 塩川 智司, 辻本 嘉助, 木下 博明
    2003 年 64 巻 4 号 p. 791-795
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胸腔鏡下胸骨挙上術(Nuss法)を行った漏斗胸患児を年少児群(20例,手術時年齢6歳0カ月±1歳8カ月,男女比18:2,)と年長児群(6例, 17歳1カ月±2歳3カ月, 6:0)にわけて検討した.年少児群の手術時間は128±35分,手術から帰宅までの期間は7±3日であったが,年長児群では174±32分, 11±3日でありいずれも有意差を認めた.年少児の1例に気胸がみられ,年長児の3例にbarのshift, flipping,断裂したwireによる肺損傷と胸腔内異物が発生し,年長児群で合併症が多かった.しかし年齢に関わらずwireでbarを固定した症例に合併症が多かったことから, stabilizerを使用することによって合併症を減少できると思われた.また年長児では肋軟骨の柔軟性が乏しいためbarを回転した際に肋軟骨骨折をきたし,その疼痛のために離床が遅れたものと推察した.術後の胸郭形態も年少児群で良好であったが, Nuss法では年長児の広い陥凹を十分に挙上できなかった.
  • 今野 広志, 鈴木 裕之, 斉藤 礼次郎, 本山 悟, 中村 征勝, 小川 純一, 北村 道彦
    2003 年 64 巻 4 号 p. 796-800
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    当科で経験した胃切除後食道癌手術症例12例について,食道癌発生因子や適切な手術術式を探るため,その臨床病理学的特徴と治療成績を検討した.患者は全例男性で,平均年齢は63.6歳.胃切除の原疾患は胃癌,胃十二指腸潰瘍がともに6例ずつ,胃切除から食道切除までの期間は平均17年と長期であった.食道病巣の主占居部位は,重複例を含めCe 1例, Ut 4例, Mt 6例, Lt 2例と胸部中部食道に多かった.また癌発生に結びつくような食道炎を背景とした異型上皮の存在を認めなかったことより,その発癌には胃切除による生理的環境の変化よりも個人の発癌素因の関与が大きいと考えられた.食道再建は主に後縦隔経路による結腸再建を行ったが,後縦隔経路再建に伴う重篤な合併症の発生は認めず, surgical riskのない胃切除後食道癌手術には後縦隔経路結腸再建を第一選択とすべきと思われた.
  • 清水 克彦, 吉田 和弘, 平井 敏弘, 峠 哲哉
    2003 年 64 巻 4 号 p. 801-804
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    〈目的〉胃癌手術において上腹部横切開法が上腹部正中切開法に比べ術後イレウスの発生頻度を低下させうるかどうかretrospectiveに検討した. 〈対象〉 1994年より2001年までの胃癌切除症例576例を対象とした.開腹方法は1998年までは正中切開,それ以降は横切開が選択され469例, 107例であった.両群間の背景として術式に差は認めなかったが,進行度はやや正中切開群に高い傾向があった. 〈結果〉術後イレウスは27例(4.7%)で8例に手術が施行された.発生頻度は横切開6.5%,正中切開4.3%と差がなく,術式では胃全摘6.9%,幽門側胃切除3.3%と有意差はないものの胃全摘が高率であった.横切開では手術時間の延長を,また早期癌に限ると手術時間の延長,出血量の増加を認めた. 〈結語〉上腹部横切開法では,術後イレウスの発生頻度は減少せず,開腹方法が術後イレウス発生の防止に与える影響は少ないものと考えられた.
  • 大見 良裕, 山田 治樹, 城 俊明, 深野 雅彦
    2003 年 64 巻 4 号 p. 805-810
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    目的:痔瘻と肛門周囲膿瘍に一次口を閉鎖または切除する手術を行い,炎症の再燃に対する効果を検討した.
    方法:手術の内容に同意を得た痔瘻67例に,脊椎麻酔下で一次口を単に縫合閉鎖する一次口閉鎖法あるいは,一次口を切除し,内肛門括約筋を貫く瘻管を縫合閉鎖する一次口切除法を行った.肛門周囲膿瘍11例には,一次口閉鎖法と膿瘍切開手術をあわせ行った.
    結果:観察期間は8~60カ月で,平均観察期間は21カ月であった.再燃は痔瘻の一次口閉鎖法で39例中3例(7.7%)に,一次口切除法で28例中1例(3.6%)にみられた.肛門周囲膿瘍では11例中10例(91%)に再燃がみられた.
    結論:膿瘍形成などの炎症の強い痔瘻には今回の手術法は無効であった.炎症の強くない低位の痔瘻には一次口閉鎖法が,高位の痔瘻には一次口切除法が有用と考えられた.
  • 今津 浩喜, 落合 正宏, 桜井 洋一, 松原 俊樹, 長谷川 茂, 中村 耕治, 森下 浩, 中村 康子, 野副 泰智, 殿村 周平, 吉 ...
    2003 年 64 巻 4 号 p. 811-815
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    成人鼠径ヘルニアに対するmesh plug法やProlene hernia systemを用いた手術法(以下mesh法)が本当に簡便で再発率が低いかにつき従来法と比較検討を行った.対象は1984年5月から2002年7月までに当科および関連施設で治療された鼠径ヘルニア患者537症例579病変で,従来法が303症例325病変, mesh法が233症例253病変である.両群間で手術時間は差がなかったが,術後疼痛期間,術後入院期間はmesh法が有意に短く(P<0.05),術後再発率も従来法が9.2%に対してmesh法は1.7%と有意に再発が少なかった(P<0.05).術後再発期間は従来法が平均7.6年に対してmesh法は平均10.8カ月と短く(P<0.01),全例2年以内の再発であった.従来法で行われた術後再発形式は内鼠径ヘルニアが多く67.9%,次いで外鼠径ヘルニアが25%,大腿ヘルニア7.1%であった.これに対してmesh法は鼠径ヘルニア再発が2症例,内鼠径ヘルニア再発,外鼠径ヘルニア再発が各々1症例の計4症例であった.手術対側ヘルニアが出た症例は従来法が10症例(3.3%),平均6.4年で発症しているのに対し, mesh法では2症例(0.9%),平均10カ月で対側発症していた.
  • 宮村 俊一, 西山 康之, 徳永 伸也, 磯貝 雅裕, 川筋 道雄, 千場 博
    2003 年 64 巻 4 号 p. 816-818
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    高齢者に対する治療方法は,加える侵襲の大きさと余命の延長,さらにQOLを考慮し慎重に決定されなければならない.われわれは80歳と高齢で遠隔転移のない甲状腺乳頭癌の気管浸潤症例に対し根治手術を行わず,局所に対し経気管的にマイクロ波による焼灼術を行った.この方法により治療施行後約3年を経過しているが癌の気管浸潤部のコントロールは良好であり,外来通院にて経過を観察中である.マイクロ波による焼灼療法は低侵襲であり,進行の遅い甲状腺乳頭癌気管浸潤症例に対する局所療法としては非常に有用な方法であると思われた.
  • 久慈 麻里子, 長渕 英介, 高木 知敬
    2003 年 64 巻 4 号 p. 819-822
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は40歳,女性. 10年前に左乳房に腫瘤を自覚するも放置していたが, 1年ほど前より腫瘤が急速に増大し,皮膚潰瘍も形成したため当科を受診した.左乳房に直径15cm大の多結節性の腫瘍を認め,皮膚は伸展されC領域に直径3cm大の潰瘍を形成していた.入院後,皮膚潰瘍から動脈性の出血を認めたため,単純左乳房切除術(Bt)を施行した.組織学的には悪性葉状腫瘍の診断であった.葉状腫瘍は比較的稀な疾患で,乳癌と異なり,肺や骨などへの血行性転移がほとんどでリンパ節転移は稀である.治療は正常乳腺を含めた局所切除で十分であり,リンパ節郭清は不要とする意見が多い.局所再発や遠隔転移の可能性もあるので慎重な経過観察が必要であるが,遠隔転移に対する治療法は現在のところ確立されていない.
  • 中久保 善敬, 直江 和彦, 奥芝 知郎, 松村 祥幸, 渡辺 不二夫, 川村 健
    2003 年 64 巻 4 号 p. 823-826
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    進行乳癌に対するpaclitaxel治療中に間質性肺炎を発症し死亡した1例を経験した.症例は61歳の女性.呼吸苦を主訴に当院呼吸器内科を受診したが,皮膚浸潤を伴う乳腺腫瘍と両側性の胸水貯留を指摘され当科へ紹介された.癌性胸膜炎を伴う進行乳癌と診断し175mg/m2/月のpaclitaxel治療を開始した.第1クール終了後にgrade 3の白血球減少と好中球減少を認めたが他には特に副作用を疑わせる所見は認めなかった.第2クール終了時には胸水も著明に減少し呼吸苦も消失したが,数日後に両側性の間質性肺炎を発症した.ステロイド投与を開始したが改善することなく4日後に死亡した.他に原因となる要素がないことなどから, paclitaxelの副作用によるものと考えられた.乳癌に対するpaclitaxel治療で発症した間質性肺炎の報告は極めて少ないが,生じうる副作用として留意する必要があると考えられた.
  • 武内 克憲, 坂本 滋, 飛田 研二, 永吉 靖弘, 西澤 永晃, 松原 純一
    2003 年 64 巻 4 号 p. 827-830
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は,交感神経ジストロフィーと右足関節骨折により長期臥床状態となっていた体重116kgの27歳女性.主訴は突然の呼吸困難と胸部不快感で心電図上,肺塞栓症が疑われた.局所的血栓溶解療法を行うため,緊急肺動脈造影が施行された.しかし,肺動脈主幹部にまで及ぶ広範な血栓と右心不全症状のためショック状態となり,緊急肺塞栓血栓除去術を施行した.人工心肺を装着し,右肺動脈主幹部より血栓を26g摘出した.術後,呼吸循環動態は改善した.術後も臥床状態が継続することと,深部静脈血栓症が残存することから,抗凝固療法と共に下大静脈に永久的血栓捕捉フィルターを留置し再発を予防した.本症例は,ショック状態の持続と肺動脈主幹部に血栓が及んだため,緊急に外科的血栓摘出術を施行し救命しえた.急性肺塞栓症の治療法は診断がつき次第,迅速な判断が重要と考えられる.
  • 四方 裕夫, 塚 正彦, 土島 秀次, 松原 純一
    2003 年 64 巻 4 号 p. 831-834
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は肺結核の既往のある77歳,男性.胸部X線写真で右肺野の異常を指摘された.胸部CTで右胸腔内に横隔膜上腫瘤と他に右下葉に小結節を認めた.腫瘤は下葉とのつながりはなく完全に被包され,内容物はほとんど壊死に陥っていた.胸腔内壊死性腫瘤は胸腔内異所性胸腺腫の被包化壊死を疑ったが,壊死組織の中にCD3 (T細胞表面抗原)陽性の集簇巣を認めるに留まり,胸腺組織が同定できなかった.同時に行った右下葉小結節の肺部分切除で乳頭型腺癌と判明し,下葉切除を行った.
  • 後藤 直樹, 坂本 和裕, 林 康史, 蓮尾 公篤, 利野 靖, 高梨 吉則
    2003 年 64 巻 4 号 p. 835-838
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は43歳,男性.主訴は左季肋部痛.胸部X線写真で左胸水を指摘,またCTスキャンで腹部腫瘤があり,精査加療目的で入院となった.左側胸部に直径5cmの弾性硬の腫瘤を触知した.胸腔穿刺にて血性胸水約2,000mlを吸引したが胸水細胞診はclass Iであった. CTスキャン, MRI検査では,左横隔膜下,腹膜下に17×15×13cmの辺縁比較的明瞭,内部不均一な腫瘤影があった.経皮生検にて破骨細胞様の多核巨細胞が出現しており,間質由来の悪性腫瘍の診断で,手術施行した.腫瘍は左側胸部に存在し,硬く表面は凹凸,不整で,第8・9・10肋骨を巻き込み外腹斜筋を越え皮下に到達し,横隔膜にも接していた.腫瘍本体および第8~10肋骨,外腹斜筋,横隔膜を合併切除した.また腫瘍に癒着していた左肺S5と大網の一部も併わせて切除した.横隔膜欠損部(17×13mm)は1mm厚のePTFEパッチ® (ゴアテックス社製)にて再建し,胸壁はMarlex mesh® (バード社製)にて補填した.術後経過は順調で,術後27日目に軽快退院した.病理診断は第9肋骨原発のgiant cell tumorであった.術後2年8カ月経過したが,再発なく外来通院中である.
  • 井原 司, 村上 英嗣, 門脇 康二, 田中 英二, 岡部 正之
    2003 年 64 巻 4 号 p. 839-845
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は81歳,女性.平成12年7月17日に胃外発育型の粘膜下腫瘍に対し手術を施行した.腫瘍は13cm大の多房性の腫瘍で,体中部大彎後壁と径1.5cmの茎部で連続していた.周囲臓器への浸潤所見は認めなかった.腫瘍茎部起始部の胃壁の一部を含めた腫瘍摘出術を施行した.病理組織学的検査で胃gastrointestinal stromal tumor (以下GIST)と診断された.術後2年1カ月目,腹部CTで体中部大彎後壁に径4cm大の腫瘤と,腹腔内に径6cm大の腫瘤を認めた. GISTの胃壁内再発,腹膜播種と診断し平成14年9月5日,胃部分切除と横行結腸切除を施行した.初回手術時の術中操作による腫瘍腫胞の散布や切除面の腫瘍細胞遺残により,壁内再発や播種性転移をきたしたと考えられた.胃外発育型GISTに対して術中できるだけ腫瘍を把持せず,周囲の正常組織を含んだ胃壁の全層切除が必要である.
  • 保坂 晃弘, 輿石 直樹, 岡崎 護, 木嶋 泰興
    2003 年 64 巻 4 号 p. 846-850
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,男性.黒色便と起立時意識消失を主訴に当院を受診し,上部消化管内視鏡にて噴門部後壁の粘膜下腫瘍とその頂部の潰瘍からの出血を認めた.生検にてGISTと診断され,噴門側胃切除術を施行した.術中肉眼所見にて,肝転移,腹膜播種は認めなかったが,噴門部のリンパ節が一部腫大していたため,腫瘍近傍のリンパ節を郭清した.腫瘍は大きさ6×5×5 cmで,免疫組織染色にてGIST, smooth muscle typeと診断した.郭清したリンパ節のうち2個に転移を認めた.術後2年8カ月経過した現在,再発の兆候は認めない.消化管間葉系腫瘍では血行性転移と腹膜播種を認めることが多く,リンパ行性転移は稀である.またリンパ節転移を認める症例の多くはすでに多臓器転移を認め,リンパ節郭清は不要であるという意見が多い.が,本症例のように,肝転移や腹膜播種を伴わずリンパ節転移のみを認める場合,リンパ節郭清が予後改善につながる可能性もあると思われる.
  • 奥村 権太, 田中 一郎, 田中 圭一, 金子 英彰, 小森山 広幸, 萩原 優
    2003 年 64 巻 4 号 p. 851-854
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,男性.平成12年9月15日,吐血にて当院受診.上部内視鏡および消化管造影検査にて胃体中部の進行胃癌と診断し,胃全摘Roux-en-Y吻合(D 2)施行した.切除標本では胃体中部小彎前壁に4.8×3.3×1.6cmの粘膜下腫瘍を認め,さらにこの粘膜下腫瘍上にかかる形で, 4.7×4.0cmのIIa集簇型病変を認めた.病理組織学的所見は粘膜下腫瘍部分が免疫組織化学的にgastrointestinal stromal tumor (GIST)と診断され, IIa集簇型病変は深達度Smの中分化型早期胃癌と診断された.近年GISTの概念が一般的となり,消化管上皮性腫瘍との合併例の報告が散見されてきているが,今回われわれは早期胃癌と胃GISTが同一部位に合併した稀な1例を経験したので報告する.
  • 櫻井 俊孝, 新名 一郎, 藤原 まゆみ, 山成 英夫, 島山 俊夫, 千々岩 一男
    2003 年 64 巻 4 号 p. 855-859
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は61歳,女性.検診目的の胃内視鏡検査にて胃体下部前壁にIIb病変を指摘され精査加療目的にて当科紹介入院となった.腹痛,急性腹症の既往はなく,刺身は食するものの食事に特殊な嗜好は認めなかった.超音波検査, CT検査上転移所見なく,早期胃癌の術前診断にて手術を施行した.開腹所見では胃癌病変は触知せず,大網内および横行結腸付着部に石灰化ないし播種を疑う10×6 mmの腫瘤を認めた.また胃小彎No.3に12×8 mmの弾性硬の腫瘤を認めリンパ節転移を疑い2群リンパ節郭清を伴う幽門側胃切除術を施行し,腫瘤を含む大網も切除した.術中の病理検査は施行していない.同腫瘤は術後の病理組織検査および寄生虫学的検査にて異所性アニサキス症と判明した.異所性アニサキス症の報告は稀であり,肉眼的には転移を否定しえず悪性腫瘍手術の際注意を要すると思われたので若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 山本 精一, 小西 孝司, 藤田 秀人, 加治 正英, 前田 基一, 薮下 和久
    2003 年 64 巻 4 号 p. 860-864
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は73歳男性で,上腹部痛に対し胃内視鏡を施行した.胃角部に径7mmのIIc病変を認め,生検結果がGroup 4であったため診断と治療目的に内視鏡的粘膜切除術を施行した.切除標本で充実性の成分と一部管状の成分があり充実性の成分はシナプトフィジン陽性, NCAM陽性であり内分泌細胞癌と診断した.断端に癌の存在が否定できないため,胃切除術を施行し,癌の遺残がなくリンパ節転移もないことを確認した.
  • 河内 保之, 宮原 和弘, 新国 恵也, 清水 武昭, 相馬 孝博
    2003 年 64 巻 4 号 p. 865-869
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    肺癌術後胃転移の1例を経験したので報告する.症例は68歳,女性で検診の胸部レントゲン検査にて右上肺野に異常陰影を指摘され,近医に入院した.胸部CT検査,気管支鏡検査などにて右肺癌と診断された.当院に紹介入院し,右上葉切除が行われた. 1年後,腫瘍マーカーの上昇を認め,腹部CT検査で胃前庭部と膵頭部の間に腫瘤を指摘された.胃内視鏡検査では胃前庭部後壁から十二指腸にかけて,中心に潰瘍を伴った粘膜下腫瘍を認めた.肺癌の胃転移と診断し,手術を行った.手術所見では胃前庭部後壁の腫瘍は10cm大で,膵頭部,十二指腸,結腸間膜,上腸間膜静脈に浸潤していた.膵頭十二指腸切除,上腸間膜静脈合併切除を行った.胃粘膜下腫瘍と肺原発巣の病理組織はいずれも分化型乳頭腺癌で類似していた.術後経過は良好で退院したが,術後9カ月で腹膜播種のため死亡した.
  • 志田 敦男, 三森 教雄, 渡部 通章, 羽田 丈紀, 川野 勧, 山崎 洋次
    2003 年 64 巻 4 号 p. 870-873
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    横行結腸癌術後3年目に胃壁転移をきたした症例を経験したので報告する.症例は71歳,女性.背部痛を主訴として来院した.平成9年7月横行結腸癌に対し,結腸左半切除術を施行された既往がある.全周性2型で病理診断は深達度se, ly 1, v1,中分化型腺癌, n1 (+), stage IIIaであった.平成12年1月主訴が出現し,上腹部CTを施行したところ,腹腔内腫瘤を指摘され,横行結腸癌のリンパ節転移と判断し,平成12年11月幽門側胃切除術を施行した.腫瘤は胃から十二指腸にかけての壁内(主座は節層)にとどまっており,境界明瞭で粘膜面,漿膜面への浸潤は認められなかった.その組織像は大腸癌の組織型と一致していた.大腸癌の胃壁転移は本邦において, 1967年以降11例の報告を認めるのみで極めて稀である.若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 市川 英幸, 田中 聡行, 池野 龍雄, 尾崎 一典, 町田 水穂
    2003 年 64 巻 4 号 p. 874-878
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    高齢で血友病と診断され,残胃癌の手術が行われた稀な1例を報告した.症例は71歳,男性. 41歳時に他院で胃潰瘍で胃切除が行われ,止血困難で術中4,000~5,000mlの大量の輸血を受けた. 2001年8月出血性吻合部潰瘍の診断で入院,内視鏡的治療で止血した. 9月前立腺肥大症の手術予定で行った血液検査上,活性化部分トロンボプラスチン時間72.3秒,第VIII因子活性1%以下で,血友病Aと診断された. 2002年1月貧血が再び出現し,胃内視鏡検査で吻合部に隆起性病変があり,生検で低分化型腺癌の診断であった.術前,術中第VIII因子濃縮製剤の補充療法を行い,残胃全摘,脾合併切除を行った.術後14日間第VIII因子濃縮製剤を投与した.術後21日目に空腸空腸吻合部からの再出血があり再度第VIII因子補充療法を14日間行い止血し,術後38日目に退院した.
  • 寺邊 政宏, 畑田 剛, 重盛 千香, 藤岡 正樹, 入山 圭二
    2003 年 64 巻 4 号 p. 879-882
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は67歳の男性.突然の腹痛を主訴に来院した.右腹部に圧痛と筋性防御を認めた.腹部単純X線およびCT所見より内ヘルニアによる絞扼性イレウスの診断で緊急手術を施行した. Mesentericoparietal fossaと考えられる腹膜窩を認め,そこをヘルニア門としTreitz靱帯より20cm肛門側から約100cmの小腸が上行結腸間膜背側に入り込み,内ヘルニアとなっていた.
    右傍十二指腸ヘルニアは腸回転異常に伴って発生することが多いが,本例では腸管の走行異常はなく,腸回転の最終段階における腸間膜の後腹膜への付着異常によりヘルニア嚢が形成されたと考えられた.術後に腹部造影CTを再検討したところ,ヘルニア内容である小腸係蹄は上行結腸間膜の背側に存在し,その小腸の支配動静脈は上腸間膜動脈の背側を弧状に右側へ向かって走行するという所見を認め,これらは本症に特徴的な所見と考えられた.
  • 佐藤 美信, 藤崎 真人, 高橋 孝行, 千葉 洋平, 丸田 守人, 前田 耕太郎
    2003 年 64 巻 4 号 p. 883-887
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    小腸腫瘍は稀だが,発症時には診断および治療に難渋することが多い.著者らは下血で発症し,腹腔鏡下に病変を確認し,切除しえた回腸脂肪腫の1例を経験したので本邦報告例の集計と共に報告する.症例は75歳,女性で,大量の下血を主訴に救急車にて搬送された.患者は半年前にも同様の症状で入院,精査が行われていた.大腸内視鏡検査で回腸よりの出血が疑われたが,小腸造影, CTなどでは原因病変を指摘できなかった.その後も大量の出血を間歇的に認めたため,原因疾患の検索と治療を目的に腹腔鏡下に腹腔内観察を施行した.バウヒン弁から約90cm口側の回腸に漿膜に異常はないが,他の部位に比べ膨隆した所見を認め,回腸腫瘍と診断し,腹腔鏡補助下に回腸部分切除術を施行した.病変は2.5×2.1×3.5cmの亜有茎性,黄色調の腫瘍で,頂部に潰瘍を認め,組織学的に脂肪腫と診断された.経過は良好で,術後4年経過した現在まで出血はなく健存中である.
  • 中西 正芳, 山口 正秀, 岡野 晋治, 竹田 靖, 山根 哲郎
    2003 年 64 巻 4 号 p. 888-892
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    腸閉塞は日常的に経験する疾患であるが,開腹の既往のない癒着性腸閉塞に遭遇することは比較的稀である.中でも高齢者に発生した腸閉塞では併存疾患のコントロール,水分や電解質のバランスの維持などに難渋することも多い.今回われわれは小腸に著明な狭窄を伴うが,開腹の既往を認めない85歳以上の超高齢者の腸閉塞を2例経験した.保存的治療により腸管の拡張は軽減したが, 2例ともイレウス管造影により回腸の著明な狭窄を認めたため,開腹手術を行った.開腹所見,病理所見とも炎症性癒着による狭窄を認めるのみであり,これに対して狭窄部腸管の切除を行い,術後の経過は良好であった.開腹の既往のない癒着性腸閉塞は比較的稀であるが,手術を要するような狭窄を伴うことがあることも念頭において対処する必要があると考えた.
  • 廣吉 基己, 荻野 和功, 黒田 大介, 守友 仁志, 藤田 博文, 鈴木 知志
    2003 年 64 巻 4 号 p. 893-896
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    交通事故による腹部鈍的外傷後の遅発性小腸狭窄により,腸閉塞をきたした1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
    症例は58歳,女性.歩行中,車にはねられCTでfree airがみられたため,穿孔性腹膜炎の診断にて開腹手術を施行した.穿孔部を含めて約40cmの小腸を切除した.術後19日目に嘔吐し,術後26日目には正中創部より小腸液の流出を認めた.腸閉塞,小腸瘻の診断にて4カ月間保存的に治療するも軽快せず,再度開腹手術を行ったところ,前回吻合部より約50cm肛門側に瘻孔の開口部を認め,その肛門側で小腸はほぼ完全閉塞となっていた.狭窄部より約20cmにわたり小腸の粘膜欠損と内腔の狭小化を認め,病理組織学的には狭窄部では粘膜は萎縮状で線維化が慢性炎症を伴ってみられた.その後皮下膿瘍を認め,瘻孔造影で上行結腸が造影されたため,回盲部切除術を行った.回腸末端より約13cmの部位に狭窄を認めた.同部より口側の回腸はやや拡張していた.
    腹部鈍的外傷後の遅発性小腸狭窄は自験例を含めて39例の本邦報告例があったが,膜様狭窄をきたしたのは本症例が2例目であった.
  • 新居 利英, 稲葉 聡, 矢吹 英彦, 石崎 彰, 藤原 康博, 水上 周二
    2003 年 64 巻 4 号 p. 897-901
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    交通外傷などの増加にて腹部鈍的外傷は増加傾向にあるが外傷後遅発性小腸狭窄は比較的稀な病態である.本症は軽微な外傷例に発生することが多く,また完全狭窄を示すことは少なく早期診断は困難とされる.今回,同症例2例を経験したので報告する.
    症例1は50歳,男性.交通事故にて腹部打撲.受傷後26日目にイレウス症状出現.一時保存的に軽快したが, 59日目再度イレウス症状出現. CTで狭窄様腸管認めたが拡張型心筋症による心機能低下ありイレウス管挿入にて治療開始.小腸造影で回腸に狭窄部位確認し86日目に手術を施行した.症例2は44歳,男性.交通事故にて腹部打撲.受傷後43日目に腹痛で外来受診. CT上小腸壁の局所的な狭窄が疑われ本症を疑い手術を施行した. 2症例とも術後良好に経過した.本症確定診断には小腸造影が最も有用であるが病態を念頭に置いたCT,超音波検査を併用することにより,より速やかに治療に移行できると考える.
  • 水谷 和毅, 小西 治郎, 林田 良三, 西村 寛, 吉森 健一, 白水 和雄
    2003 年 64 巻 4 号 p. 902-906
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,男性.腹部膨満感を主訴に近医を受診し,多量の腹水を指摘され当院紹介入院となった.腹腔試験穿刺にて乳糜腹水が採取され,腹部CTでは腹部大動脈腹側の腸間膜に石灰化像を伴う径約5cmの腫瘤陰影がみられた.乳糜腹水の原因疾患として悪性腫瘍,結核などが疑われたが,全身精査および腹腔鏡下組織生検にても疾患を同定することはできなかった.腹水はその後も減少傾向がみられなかったため,診断および治療目的にて開腹手術を施行した.開腹所見で乳糜腹水の他, Treitz靱帯より約80cmの部より肛門側約210cmに渡る小腸に浮腫,リンパ液の鬱滞を認めた.同部の腸間膜は硬化,短縮し,中枢側に石灰化を伴う腫瘤が存在した.この腫瘤により小腸および腸間膜のリンパ管が閉塞,破綻し乳糜腹水が発生したと考えられた.浮腫を起こした小腸を切除することにより乳糜腹水は消退した.病理組織診断で腸間膜脂肪織炎と診断された.
  • 高谷 義博, 八坂 貴宏, 藤原 紳祐, 大坪 竜太
    2003 年 64 巻 4 号 p. 907-911
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,男性. 2001年11月,心窩部痛を訴え,精査加療目的で入院した.腸炎と診断し,保存的に加療した. 3病日より食事を再開したが,症状再燃を認め,保存的治療を継続した. 31病日,腸閉塞が顕在化し,造影により,器質的狭窄の存在を強く疑い, 39病日,腹腔鏡補助下手術を実施した.触診上,回腸に数個の硬結を認めた.同部位を切開し,膜様狭窄の中心にピンホール状の内腔を認めた.術中小腸内視鏡検査を行い,潰瘍瘢痕狭窄が3箇所存在した.これらを切除し,病理学検査後,分類不能な小腸潰瘍による多発性小腸狭窄と診断した.術後再発は認めていない.臨床的に示唆に富む症例であるため報告する.
  • 太田 俊介, 杉浦 禎一, 林 祐次, 中西 賢一, 小林 建仁
    2003 年 64 巻 4 号 p. 912-915
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    難治性小腸瘻に対し, Tチューブを用いた瘻孔延長術を行い治癒しえたので報告する.症例は54歳,男性.仙骨浸潤を伴う会陰部皮膚癌で,会陰部切除,腹会陰式直腸切断術, S3以下の仙骨合併切除および腹直筋有茎皮弁を用いた会陰再建を行った.術後2カ月に仙腸関節炎を合併して小腸皮膚瘻を生じたが瘻孔が1.5cmしかなく, 3カ月間保存的に加療したが改善しなかった. Tチューブを用いて瘻孔延長術を行ったところ, 1カ月で瘻孔は治癒した.
  • 庄野 嘉治, 田伏 克惇, 辻 毅, 井上 正也, 上野 昌樹, 谷島 裕之
    2003 年 64 巻 4 号 p. 916-919
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    患者は69歳の男性.小腸腫瘍,転移性肝腫瘍の診断で手術を施行,病理組織検査にて小腸原発GISTとその肝転移と診断した.その後,転移性肝腫瘍が再発し肝切除, PMCT, TAEを繰り返し施行した.肝内に多数の転移性肝腫瘍および腹壁と腹腔内腫瘍を認め,腹壁腫瘍の針生検による病理組織学的検査でGISTの診断で,免疫組織染色診断にてc-kit (++), CD34 (+)であった.患者がSTI571 (メシル酸イマチニブ:チロシンキナーゼ阻害剤) 400mg/dayの服薬を開始した.約2カ月後の腹部CT, USで転移性肝腫瘍は著明に縮小,腹壁腫瘍の針生検では悪性細胞は認めなかった.また,腫瘍のc-kit遺伝子exonllに変異を認めた.今回われわれは切除不能malignant GISTに対してSTI571が奏効した1例を経験した.
  • 佐藤 政広, 堀江 久永, 小泉 大, 石橋 敏光, 安田 是和, 永井 秀雄
    2003 年 64 巻 4 号 p. 920-923
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,男性. 2002年1月5日発熱にて発症した.近医にて抗生物質を投与されるも解熱せず,黄疸を呈してきたため急性肝炎を疑われ入院加療を受けた.しかし状態は改善せず,上腸間膜静脈血栓が認められたため, 1月21日当院消化器内科へ転院した.腹部は平坦,軟で,腹膜刺激症状は認められなかった.血液検査では,白血球, CRP,総ビリルビンの上昇を認めた.腹部USおよびCT検査で肝腫大,脾腫,上腸間膜静脈血栓が認められ,虫垂近傍に径5 cmの膿瘍が描出された.静脈血培養ではグラム陰性桿菌が検出された.以上より本病態の原因は虫垂炎によるものと診断され1月23日当科紹介となり同日虫垂切除術およびドレナージ術が施行された.虫垂は後腹膜に穿孔し膿瘍を形成していた.腹膜刺激症状を呈さずに,敗血症,上腸間膜静脈血栓症および高ビリルビン血症を呈するに至った虫垂炎の貴重な症例と考え,文献的考察を加え報告する.
  • 千葉 斉一, 山本 裕, 森 克昭, 米川 甫
    2003 年 64 巻 4 号 p. 924-927
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    精神発達遅滞に合併したS状結腸軸捻転症の1例を経験したので文献的考察を加え報告する.症例は25歳,男性で,以前より自閉症にて施設に入所していた.腹痛,嘔吐を主訴に当院内科受診.腹部単純X線写真上著明に拡張した結腸ガス(coffee bean sign)を認め, S状結腸軸捻転症と診断した.内視鏡にて拡張腸管の内容を吸引・減圧して腹痛は改善したが, 1カ月前にも同症状にて入院した既往がありS状結腸切除術を施行した.手術所見では拡張した過長S状結腸を認め,下行結腸と上行結腸の一部は後腹膜に固定されていなかった.切除したS状結腸の病理組織学的検査では粘膜,筋層間の神経叢に異常所見は認めなかった.
  • 吉田 直優, 角 泰廣, 澤田 傑, 村瀬 勝俊, 島本 強, 尾関 豊
    2003 年 64 巻 4 号 p. 928-931
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は51歳,女性.腹部膨満感があり近医を受診し,下腹部正中に新生児頭大の硬い腫瘤を指摘された. CT, MRIで臍上部から骨盤内の子宮底部にまで至る大きさ18×12cmの内部不均一な腫瘍を認めた.腸間膜あるいは卵巣や後腹膜など由来の腫瘍と診断し,手術を施行した.腫瘍は表面凹凸不整で硬く, S状結腸間膜を腹側から背側へと貫くように存在し,子宮や腸管との連続性はなかった.腫瘍とS状結腸の一部を切除した.腫瘍は大きさ18×12×10cmで,白色調で内部に出血壊死を認めた.病理組織学的検査で腫瘍は紡錘形の異型細胞が充実性に増殖し,免疫染色でsmooth muscle actin (以下SMA)陽性, c-kit, S-100陰性で, S状結腸間膜から発生した平滑筋肉腫と考えられた.自覚症状が軽度な腹部腫瘤を見た場合には腸間膜平滑筋肉腫を念頭に置く必要があると考えられた.
  • 深澤 貴子, 中村 利夫, 丸山 敬二, 宮崎 茂夫, 中村 達
    2003 年 64 巻 4 号 p. 932-935
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    回盲部切除後長期経過中にビタミンB12欠乏による大球性貧血を呈したCrohn病の1例を経験した.症例は35歳,女性. 1982年発症の小腸大腸型Crohn病で他院にて回盲部切除を, 1993年当院にて吻合部狭窄および同部の瘻孔形成に対し回腸部分切除術を施行した. 2001年8月中旬より全身倦怠感,下腿浮腫を自覚し,血液検査で著明な大球性貧血と低ビタミンB12血症を認めた.消化管の検索では,吻合部口側にびらんを認めたが便潜血は陰性であり,瘻孔や盲係蹄は証明されなかった.ビタミンB12欠乏性大球性貧血の診断にてmecobalaminの経静脈投与を開始し,貧血は急速に改善した. Crohn病では回腸末端から盲腸が好発部位であり回盲部切除が施行されることが多いが,回盲部切除後の経過中に貧血を認めた場合,寛解期であっても,ビタミンB12欠乏に注意を払い原因検索と治療を進める必要がある.
  • 梶原 由規, 橋口 陽二郎, 石川 啓一, 松原 修, 望月 英隆
    2003 年 64 巻 4 号 p. 936-939
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は64歳,女性.主訴は便柱狭小.両側異時性乳癌の手術歴有り.近医にて直腸腫瘤を指摘され,手術目的にて入院.入院時,左胸水貯留を認め,胸水穿刺吸引細胞診にてclass V.骨シンチにて右第9肋骨に集積を認め乳癌の再発転移の併存と考えられた.注腸検査,大腸内視鏡検査にて直腸の3カ所(Rs=病変1. Rab=病変2. Rbp=病変3)に腫瘤を認め,生検にて病変1は高分化腺癌,病変2, 3は腫瘍成分を認めず生検を繰り返したが確定診断は得られなかった.そこで病変1の直腸癌に対し,高位前方切除術施行(病理所見; 1型, mod, ss, ly1, v1, n0).同時に病変3に対し経肛門的切除生検を施行.病理組織所見にてextranodal marginal zone B-cell lymphoma, MALT typeの診断を得た.患者の希望にて追加切除は行わず,病変2と3には放射線療法(40Gy)を施行し,いずれも消失をみた.再発乳癌に対しては経口tamoxifen投与を施行しつつ経過観察中である.
  • 黒田 直樹, 日馬 幹弘, 大久保 和隆, 岡田 佳平, 野牛 道晃, 山梨 美紀夫
    2003 年 64 巻 4 号 p. 940-944
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    原発性虫垂癌は,切除した虫垂の0.01~0.19%を占める比較的稀な疾患であり,その約半数は粘液嚢胞腺癌である.この疾患は遠隔転移やリンパ行性転移は稀とされている.今回,胆嚢転移を生じた虫垂粘液嚢胞腺癌の症例を経験したので報告する.症例は79歳の男性で,突然生じた右季肋部痛のため当院内科に入院した.患者は虫垂粘液嚢胞腺癌にて回盲部切除を受けており, 2年間経過良好であった.超音波と腹部CTにて急性胆嚢炎の診断を得たため,外科にて開腹を行った.胆嚢内は感染胆汁で満たされており,頸部の漿膜下に腫瘤を認めた.腫脹リンパ節や癒着部を可及的に切除した.病理学的に虫垂粘液嚢胞腺癌の転移と診断された.本腫瘍の胆嚢転移は非常に稀な病態であり,現在まで報告はみられなかった.
  • 坂本 吉隆, 浅海 信也, 金 容秀, 永渕 幸寿
    2003 年 64 巻 4 号 p. 945-948
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,女性.下腹部痛と嘔気を主訴に来院.下腹部に圧痛を認めたが筋性防御はなかった.腹部単純X線で骨盤内にガス像と腹部CTで内部比較的均一な腫瘤を認めた.注腸造影では造影剤が腫瘤部に漏出した.腸間膜への穿孔を疑い来院より6時間後,緊急手術を行った.開腹所見では,腹水を認めたが便臭は伴っていなかった. S状結腸間膜が手拳大の腫瘤を形成し,この肛門側に大腸癌を認めた.手術は高位前方切除を施行した.切除標本では,亜全周性に2型の腫瘍を認め,その口側約2.5cmに穿孔部を認めた.病理組織診断では腫瘍と穿孔部の間は浮腫を伴った正常粘膜よりなり,閉塞性大腸炎による腸間膜への穿孔と診断した.術後13日目に軽快退院した.
  • 田村 明彦, 赤松 秀敏, 半田 寛, 伊澤 祥光, 松田 純一, 松井 淳一
    2003 年 64 巻 4 号 p. 949-953
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は55歳の女性で1週間前よりの腹痛,便秘を主訴に当院受診,腹部単純X線にて大腸閉塞の疑いで入院となった.内視鏡にてS状結腸に内腔を占拠する可動性のある腫瘤を2個認めた. CTでは脂肪腫による腸重積が疑われ,手術となった.開腹すると下行結腸からS状結腸が重積しており一塊として切除,悪性疾患も考慮してリンパ節郭清(D3)を施行した.切除標本では下行結腸に多発するポリープを認め,最大径は8.5cmであった.ポリープによる重積の先進部と思われるS状結腸に径2cmの2型の癌を認めた.病理学的には漿膜下組織由来の良性の脂肪腫と,筋層に浸潤する中分化腺癌の診断であった.大腸脂肪腫は癌を合併しやすいとされ,本邦報告例36例中,本症例のように両者が近接していたのは11例で,うち9例は脂肪腫が癌の口側または同じ部位に存在し,慢性的な接触があったと思われ発癌に関与していた可能性が考えられた.
  • 大谷 博, 山崎 修, 松山 光春, 堀井 勝彦, 清水 貞利, 東野 正幸
    2003 年 64 巻 4 号 p. 954-959
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌(hepatocellular carcinoma;以下HCCと略記)に対してTAEを施行後, bilomaを形成し,その後bilomaを含めて肝切除した2症例を報告する.症例1は67歳,男性.アルコール性慢性肝疾患を背景としたHCCに対してTAEを施行後, bilomaの診断をうけた.その後,当院での精査にて肝S8にHCCの再発が疑われた.症例2は65歳,女性. C型肝炎を背景としたHCCに対し, TAE施行約1.5カ月後に,多発するbilomaを認めた.その後,腫瘍マーカーが再上昇し,再発が疑われたが, HCCとbilomaの鑑別は画像上困難であった.
    Bilomaが保存的治療で軽快しない場合や,自験例の様にbilomaの遺残によりその後の癌治療に制約が大きい場合は,癌病巣も含めた外科的切除も考慮されるべきと考えた.
  • 和田 靖, 横山 智, 青木 豪, 吉松 軍平, 安達 尚宣, 富永 剛
    2003 年 64 巻 4 号 p. 960-963
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は38歳,男性.飲酒運転にて追突事故を起こし,ハンドルにて上腹部を打撲,当院に救急搬送された.腹部超音波検査では腫大した胆嚢内にacoustic shadowを伴わない高エコー像を,腹部CT検査では胆嚢内部の高濃度域と肝表面の液体貯留を認めたため,胆嚢内出血および腹腔内出血と診断された.全身状態が安定していたため,保存的治療を選択した.受傷翌日の採血では貧血が認められたが,超音波検査およびCT検査で腹腔内出血の増加は認められず,手術は見送った.徐々に貧血は改善し,全身状態および肝機能の増悪もみられず,第22病日に退院となった.退院後に施行した超音波検査, CT検査でも胆嚢の器質的,機能的異常所見はなく,保存的治療にて治癒したと考えられた.腹部鈍的外傷による胆嚢損傷は稀であるが,ほぼ全例に手術が行われており,合併症なく保存的に治癒したのは自験例を含め本邦では2例のみであった.
  • 高野 真吾, 高橋 基夫, 鈴木 康弘, 狭間 一明, 高橋 康宏, 吉岡 達也
    2003 年 64 巻 4 号 p. 964-968
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は8歳,男児.嘔気,上腹部痛を主訴に当院小児科受診した.受診時腹部触診にて右上腹部腫瘤を触知し腹部超音波検査にて胆嚢壁肥厚を認めたため,胆嚢炎疑いで入院.絶食,抗生剤投与にても軽快せず,磁気共鳴式胆道膵管造影(MRCP)施行された.胆嚢の内下方変位,胆嚢管の不明瞭化が観察されたため,胆嚢捻転症に伴う胆嚢壊死の診断で開腹手術施行した.手術所見では胆嚢は頸部を中心に反時計方向に約720度捻転し,壊死を呈していた.術後は合併症なく軽快退院した.小児発症の胆嚢捻転症は非常に稀であり, 10歳以下では本症例を含め22例が報告されているのみである.術前診断は従来困難であるとする報告が多かったが,近年は術前に診断可能例の報告が増加している.本症例でも術前に正診が得られ,腹部US, CTに加え, MRCP,カラードップラーエコーが診断に有用であった.
  • 牧本 伸一郎, 小松 輝也, 坂本 一喜, 新保 雅也, 林部 章, 仲本 剛, 園村 哲郎
    2003 年 64 巻 4 号 p. 969-973
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    膵十二指腸動脈瘤は腹部内臓動脈瘤の中でも比較的稀な疾患であるが,今回,急性膵炎の治療中に動脈瘤が発生し急激に増大した1例を経験した.
    症例は67歳,男性.上腹部痛,腹部膨満感を主訴として近医受診.急性膵炎の診断にて同日に紹介入院となった.腹部CTにて膵頭部は腫大し周囲にはfluidが貯留していたが動脈瘤は認めなかった.入院後11日目には同部に径1.5cmの動脈瘤が発生しており,入院後28日目には長径2.3cmの動脈瘤に増大していた.腹部血管造影では前下膵十二指腸動脈に動脈瘤を認め,経カテーテル動脈塞栓術を試みたが困難であり動脈瘤切除術を行った.急性膵炎の発症時には本症も合併症の一つとして常に考えておく必要があると考えられた.
  • 谷口 史洋, 松田 哲朗, 津田 知宏, 相川 一郎
    2003 年 64 巻 4 号 p. 974-980
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は54歳,男性.進行直腸癌にて骨盤内臓全摘術を施行した.術後経過観察中に,血清CEA値の再上昇を認め, CT検査で脾に2 cmの低吸収域を伴う腫瘍陰影が出現したため,精査目的で入院となった.腹部MRIでT1強調画像(T1WI)上,脾実質と等信号で内部構造不均一な腫瘤像を認め, T2強調画像(T2WI)では低信号を示した.血管造影では異常所見は認めなかった.脾原発の良性腫瘍も考えられたが,直腸癌の孤立性脾転移の可能性も否定できないため脾摘術を施行した.腫瘍は20×18mmの大きさで,被膜形成はなく境界明瞭であった.割面は赤褐色充実性で,内部には星忙状の白色結節を認めた.病理組織学的所見にて病変部は線維芽細胞の増殖とリンパ球,形質細胞の浸潤からなっていた.以上より,炎症性偽腫瘍と診断した.本症は術前診断が困難であり,脾摘せざるをえないことが多い.本邦42例を集計し,文献的考察を加えて報告する.
  • 吉村 淳, 坂本 尚美, 仲川 昌之, 豊川 元邦
    2003 年 64 巻 4 号 p. 981-985
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は糖尿病を有する58歳,男性,会陰部の疼痛・腫脹を主訴に入院となった. CTにて会陰部から陰嚢の結合組織内にガスの貯留を認め,切開を行うと膿汁とガスが噴出した.切開後も炎症は下腹部,鼠径部へ拡大し,切開を追加したが消退しなかった.入院20日目にARDSを発症し,患者は呼吸不全となった.下腹部,鼠径部,会陰部の皮膚が壊死に陥り,デブリドマンを繰り返すことにより,大きな皮膚欠損となったがこれにより炎症は消退した.呼吸状態も改善し29日目に人工呼吸器を離脱した. Fournier症候群は会陰部を中心とする壊疽性筋膜炎で,しばしば治療に抵抗し重篤化する.こうした例では壊死組織の積極的な広範囲切除が必要と考えられる.
  • 亀井 義明, 梶原 伸介, 小野 芳人, 岩川 和秀, 岡田 憲三
    2003 年 64 巻 4 号 p. 986-991
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下に切除しえた小網嚢腫の2例を経験した.症例1は31歳,男性.平成9年1月,感冒にて近医受診し胸部X線写真にて心窩部に異常陰影を指摘された.さらに腹部CT, MRI検査にて小網嚢腫と診断され,平成9年6月11日,腹腔鏡下小網嚢腫切除術を施行した.病理診断はリンパ管腫であった.症例2は76歳,女性.近医にて上腹部痛の精査中に胆嚢腫瘍および肝嚢胞と診断されたが,術中小網嚢腫と診断,腹腔鏡下に切除した.病理診断は中皮腫であった.手術はいずれも腹腔鏡下に安全かつ低侵襲に施行出来た.
  • 吉岡 裕一郎, 森浦 滋明, 小林 一郎, 石黒 成治, 田畑 智丈, 松本 隆利
    2003 年 64 巻 4 号 p. 992-994
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,女性.潰瘍性大腸炎にて他院でステロイド治療を受けていた.胸部単純X線写真で両側横隔膜下に遊離ガスを認め,消化管穿孔の疑いで当院に紹介された.腹膜刺激症状は乏しく,採血検査上も炎症反応は軽度であった.しかし,消化管穿孔を否定できず,腹腔鏡による検索を施行した.腹膜炎の所見は認められず,術中内視鏡でも上部消化管に潰瘍などの異常を認めなかった.その他の気腹の誘因も認められず,特発性気腹症と診断した.
    腹膜炎所見の乏しい気腹では消化管以外の原因を考慮する必要があるが,消化管穿孔を否定することは困難なことが多い.そのような症例では腹腔鏡による検索が有用であると考える.
  • 松本 昌久, 丸田 守人, 前田 耕太郎, 古賀 崇, 黒田 誠
    2003 年 64 巻 4 号 p. 995-998
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    脂肪肉腫の一部が,悪性顆粒細胞腫様の脱分化を示した稀な症例を経験したので報告する.症例は84歳の女性で,腹部膨満を主訴とし,卵巣腫瘍の疑いで手術が施行された.小腸腸間膜に約10cm大で黄色調の腫瘍Aと後腹膜に約15cm大で内部に出血壊死を伴う腫瘍Bを認め,両腫瘍に連続性はなかったため別々に摘出手術を施行した.術前のCT, MRI検査でも,二つの腫瘍A, Bが認められ内部構造が異なっていた.組織所見では,腫瘍Aは胞体内に大小の脂肪空胞を有し,異型lipoblastの増生がみられる高分化型脂肪肉腫の像であった.一方,腫瘍Bは,ジアスターゼ消化性PAS陽性の好酸性顆粒を有し,脂肪染色陰性で悪性顆粒細胞腫様の像を示したが,その辺縁に脂肪組織の異型細胞が認められたことから,多発性高分化型脂肪肉腫が悪性顆粒細胞腫様に脱分化した脂肪肉腫と考えられた.
  • 横田 良一, 秦 温信, 松岡 伸一, 中島 信久, 蒔田 圭子, 佐野 文男
    2003 年 64 巻 4 号 p. 999-1002
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    鼠径ヘルニアは一般外科手術の中で占める割合の高い疾患であるが,鼠径ヘルニア嚢に悪性腫瘍が存在する頻度は少ない.今回,われわれはS状結腸癌が右鼠径ヘルニア嚢に転移をきたした症例を経験した.症例は55歳,女性. S状結腸癌術後CEA高値が遷延し腹部造影CTにて右鼠径部に増強効果のある約2.5cmの腫瘤を認めた.吸引細胞診にてS状結腸癌と同様の腺癌を認め, S状結腸癌の右鼠径ヘルニア嚢転移と診断された.その後の全身精査にて他に転移を認めず,単発性鼠径ヘルニア嚢転移と考えられ摘出術を施行した.浸潤の疑われた横筋筋膜,外腹斜筋腱膜の一部も含め合併切除し,組織欠損に対しては, PROLENE Hernia System® (Johnson & Johnson)を使用しTension freeにてヘルニア修復術を行った.
  • 菊池 慎二, 坂 佳奈子, 志田 晴彦, 今成 朋洋, 町田 武久, 山本 登司
    2003 年 64 巻 4 号 p. 1003-1006
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    腰ヘルニアは,腰部の解剖学的抵抗減弱部位である上,下腰三角に発生する稀なヘルニアである.最近われわれは各々の部位に発生したヘルニアの2例を経験した.
    症例1は59歳,男性.左腰背部に腹圧をかけると膨隆する9×7cm大の無痛性で弾性軟な腫瘤が出現した. MRI検査で後腹膜脂肪組織の脱出する左上腰ヘルニアと診断し, PHSを用いた根治術を施行した.症例2は55歳,女性.人工股関節障害に対し左腸骨移植片採取による左人工股関節再形成術を施行した.術後,腸骨欠損部上方より腹腔内臓器の脱出を認め,下腰ヘルニアの診断でPHSを用いた根治術を施行した.両者とも経過は順調で術後愁訴もなく,現在まで再発は認めていない.
    腰ヘルニアは非常に稀な疾患で治療法が検討されているが,今回われわれが施行したPHSによる修復法は, tension-freeであり術後愁訴が少ないこと,侵襲が少なく補強も強固であることより,非常に有効であった.
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