Nonocclusive mesenteric ischemia (NOMI)と診断した1例を経験したので報告する.症例は58歳,男性.腹痛,嘔気を主訴に緊急入院.慢性腎不全に対して人工透析施行中であった.来院時ショック状態で,下腹部を中心に腹膜刺激症状を認めた.腹部CT検査にてfree airを認め,消化管穿孔,汎発性腹膜炎の診断で緊急手術を施行した.手術所見では回腸終末部から上行結腸にかけて非連続的な腸管壊死と回腸終末部の多発腸管穿孔および回腸末端から口側約100cmの連続する腸管壊死を認めた.壊死腸管を切除し, delayed anastomosisを考慮し人工肛門,小腸瘻を造設した.病理組織所見で粘膜の強い壊死性変化と潰瘍形成を認めた.腸間膜の主幹動静脈に血栓,閉塞所見はなく, NOMIと診断した.術後ショック状態から離脱不能で,第2病日に死亡した. NOMIに遭遇する機会は少ないものの予後不良であり,急性腹症の鑑別診断として重要と考えた.