2006 年 67 巻 1 号 p. 197-200
症例は72歳,女性,腹痛,嘔吐にて当院内科を受診.腹部は平坦,軟であったが,腹部単純X線写真で小腸ガス像・鏡面像を認め,腹部CTで腸管の限局性拡張,腸間膜集簇像を認めた.腸閉塞の診断でイレウス管を留置し,保存的治療を開始した.保存的治療で改善を認めないためイレウス管留置後5日目に手術を施行した.開腹すると十二指腸下行脚外側に異常窩を認め,空腸が約20cm嵌入していた.嵌入空腸を整復したところ,腸管の循環障害は認めなかったため,約2cmのヘルニア門を縫合閉鎖した.本症例は比較的稀な内ヘルニアの中でもヘルニア門の位置する場所が特徴的であった.同様の形態を示す内ヘルニアの報告例は少なく,解剖学的位置関係から鑑別が必要と思われる右傍十二指腸ヘルニアと比較し,文献的考察を加え報告する.