産業衛生学雑誌
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調査報告
看護・介護職者の自覚的健康および抑うつ度と自覚症状との関係
松岡 治子鈴木 庄亮
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2008 年 50 巻 2 号 p. 49-57

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抄録

看護・介護職者の自覚的健康および抑うつ度と自覚症状との関係:松岡治子ほか.群馬大学医学部保健学科―本研究の目的は,女性の看護職および介護職者における心身の健康度の特徴,および看護者らの抑うつ度がどのような自覚症状と関係があるのかを明らかにすることである.群馬県内のA精神科病院に勤務する女性の看護職89名,介護職78名を対象に「健康チェック票THI」(THI:the Total Health Index)を用いて心身の健康度を調査した.その結果,本研究の対象集団167名における『多愁訴』,『呼吸器』,『抑うつ』,『神経症』の4つのTHI尺度得点の平均値は,3つのTHI基準集団と比較していずれも有意に高かった.本研究では夜勤の有無および看護と介護の職種の違いは,THIの尺度得点に差をもたらさなかった.喫煙率は日本の成人女子の2倍近く高かった.これらの所見は,彼女らが毎日の対人援助のためかなりのストレス状態にあることを示しており,ストレス・マネージメントのための支援の必要性が示唆された.また,抑うつ尺度得点とその他のTHI尺度得点との相関において,相関係数rが大きかった尺度は『情緒不安定』0.75,『生活不規則』0.54,『直情径行』0.53,『多愁訴』0.52であり,rが小さかったのは『消化器』0.35,『呼吸器』0.34,『口と肛門』0.32であった.本研究における抑うつの程度と関係の深い自覚症状は情緒不安定など精神心理的要素が関係するものが多く,口腔や呼吸器など具体的な特定臓器に関係した自覚症状とは関連が薄いことが明らかとなった.
(産衛誌2008; 50: 49-57)

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