1.はじめに
アジアの
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では、近代都市としての発展は1900年前後から始まることが多いが、そこでは都市域の拡大にともなって河川や湖沼を埋め立てたり、地下水を大量に揚水するなどして、水環境に大きな変化を生じてさせてきた。その結果、地下水位の低下・塩水化、地盤沈下、水質汚染など多くの水環境問題を起こすことになった。この一連の変化は、東京や大阪など日本の
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では第二次世界大戦から高度経済成長期にかけて顕著になり、様々な対策をとった結果、現在では多くの水環境問題は解決された。しかし、アジアの
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でもソウル・台北などではこの現象が日本の例より約20年程遅れて表れたし、バンコク・ジャカルタ・マニラなどにおいてはさらに遅れ、現在、その問題が顕在化している状態にある。
このような変化の要因は様々あるが、本発表では都市の発展過程に焦点をあてて水環境変化の考察を行ってみたい。なお、対象都市は、前述のアジアの7つの
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とし、研究の対象期間は、都市によって若干異なるがおよそ最近の100年間ほどとする。
2.都市の発展過程モデル
近代都市としての空間的な発展過程は、都市によってそれぞれ異なっている。しかし、本発表では都市を発展段階によって4つの都市群(〈東京・大阪)、〈ソウル・台北〉、〈バンコク〉、〈ジャカルタ・マニラ〉)に分類して、都市群ごとに3つの時期(1900年頃、1970年頃、2000年頃)に分けてモデル化して示すことで、概略をとらえることとしたい。なお、総合地球環境学研究所の(「都市の地下環境に残る人間活動の影響」プロジェクトでは、1930年頃、1970年頃、2000年頃の地形図をもとにしてGIS用いて表現した土地利用の地図を作成しているが、それなども参考にした。
3.水環境とのかかわり
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の発展過程は、都市の起源によって異なり、その後どのような土地利用の土地に拡大したかによっても違った様相をみせる。また対象の
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は、現在では周辺を含めて連担都市化しているが、それらには衛星都市を取り込んで
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となった都市(東京・大阪・ソウル・台北・マニラ)と、都市が徐々に拡大して衛星都市を形成せずに
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になった都市(バンコク・ジャカルタ)の2つのタイプがみられる。また、空間的にとらえた発展過程もいくつかの特徴あるパターンに分類することができる。
都市の発展過程において、前述のような都市域の地表面の変化が起こり、水環境問題につながっていったが、_丸1_どのような種類の水環境問題なのか、_丸2_いつ頃起こったのか、_丸3_どのように解決したのか、という経緯を明らかにすると、4つの都市群ごとに明確な違いがみられる。
4.おわりに
早い時期に発展をした都市ほど、早い時期に水環境問題が起こり、現在では多くの水環境問題は解決されている。逆に遅い時期に発展した都市では、現在深刻な水環境問題に直面している。つまりこのことは、早い時期に発展し、早い時期に水環境問題を引き起こした東京や大阪での経験を、現在起こっている都市やこれから起こると考えられる都市に適用することができるならば、極めて効果的であることを意味する。この研究は、まだ充分に解明されていない分野に光をあてるという基礎研究としての価値をもつだけでなく、実用的な意義もあろう。
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