脳循環代謝(日本脳循環代謝学会機関誌)
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シンポジウム 2 脳梗塞の病態と新規治療開発の将来像
成長因子プログラニュリンによる脳保護療法
下畑 享良金澤 雅人鳥谷部 真史小山 美咲高橋 哲哉西澤 正豊
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2016 年 27 巻 2 号 p. 265-269

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抄録

我々は,脳梗塞に対する組織プラスミノゲン・アクチベーター(t-PA)療法に併用し,予後を改善する薬剤の開発を目指している.成長因子プログラニュリン(PGRN)に注目し検討を行ったところ,脳虚血後の著明な発現増加が確認され,虚血中心ではミクログリア,ペナンブラでは神経細胞がその産生を担っていた.脳虚血におけるPGRN の役割を確認するため,PGRN KO マウスとt-PA 投与脳塞栓モデルを用いた検証を行ったところ,PGRN の欠乏は脳梗塞の増悪,逆にPGRN 投与は脳保護的に作用した.PGRN の効果は多彩で,TAR DNA-binding protein 43 kDa を介する神経保護作用,血管内皮増殖因子の抑制を介する血管保護作用,インターロイキン10 を介する抗炎症作用を認めた.PGRN は多面的な脳保護作用を持つ可能性があることから,脳梗塞の新規治療薬として有望である.

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© 2016 日本脳循環代謝学会
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