2014 年 54 巻 5 号 p. 429-433
症例は73歳男性である.自発性の低下を主訴に来院し,MRI拡散強調画像で右尾状核と左被殻に高信号域をみとめた.脳梗塞の既往に対して抗血小板薬を服用しており,これに抗凝固薬を追加したが,第10病日に右片麻痺が出現し,MRIで多発性の新規病変をみとめた.他臓器症状はともなわなかったが,入院時より持続する発熱と炎症反応から血管炎の関与をうたがい,MPO-ANCAの上昇に基づきANCA関連血管炎と診断した.腎臓や肺の病変を合併せず,脳病変を契機に診断にいたったANCA関連血管炎の報告はまれであり,不明熱をともなう脳梗塞では血管炎による機序も念頭において検索を進めることが重要と考えられた.