日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
ミニ総説:アレルギー性炎症治療戦略の最前線―基礎から臨床まで―
ヒスタミンH1受容体の細胞内移行と薬物感受性変化
菱沼 滋齋藤 政樹
著者情報
ジャーナル フリー

2005 年 125 巻 5 号 p. 251-258

詳細
抄録

ヒスタミンH1受容体は,Gqタンパク質共役型受容体であり,末梢ではアレルギー反応,中枢では覚醒レベル調節などに関与する.細胞表面H1受容体の変化は,このような生体機能の生理的,病理的あるいは薬理的変動に関与すると考えられる.一般に,Gタンパク質共役型受容体は,Gタンパク質共役型受容体キナーゼ(GRK)/プロテインホスファターゼ2A(PP2A)系によって脱感作/再感作されることが知られているが,Ca2+動員反応と共役するGqタンパク質共役型H1受容体の場合には,GRK/PP2A系とCaMキナーゼII(CaMK II)/プロテインホスファターゼ2B(PP2B)系による二重制御機構が関与していると考えられる.即ち,(1)H1受容体がヒスタミンによって刺激されると,細胞内Ca2+濃度が一過性に上昇してCa2+/カルモジュリン(CaM)が活性化され,活性化されたCaMはGRKを阻害することによってH1受容体の細胞内移行を阻害し,H1受容体を細胞表面に留める.(2)一方,CaMは,CaMK IIとPP2Bの活性化を介して細胞表面H1受容体の脱感作および再感作を誘発する.(3)次に,Ca2+ポンプなどによって細胞質Ca2+濃度が低下すると,それまでCa2+/CaMによって抑制されていたGRKが作動を開始し,クラスリン被覆小胞の形成を介してH1受容体の細胞内輸送を誘発する.(4)そして,細胞内に移行したH1受容体は,PP2Aを介した再感作機構によって正常な受容体として細胞膜にリサイクリングされる.以上,細胞表面H1受容体の数や機能は,H1受容体を介したCa2+シグナリングによって巧妙なフィードバック調節を受けることが明らかとなりつつある.H1受容体の制御機構に関する基礎的研究が臨床応用に発展し,医療に貢献できるよう期待したい.

著者関連情報
© 2005 公益社団法人 日本薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top