日本薬理学雑誌
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125 巻 , 5 号
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ミニ総説:アレルギー性炎症治療戦略の最前線―基礎から臨床まで―
  • 福井 裕行
    2005 年 125 巻 5 号 p. 245-250
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/01
    ジャーナル フリー
    ヒスタミンH1受容体を介するシグナルはH1受容体の発現レベルにより調節を受けることが明らかにされつつある.先ず,リコンビナントH1受容体を発現する培養細胞を用いて,H1受容体のダウン調節が明らかにされた.この機構にはH1受容体分子のリン酸化が関与することを明らかにした.そして,リン酸化部位として5ヵ所のセリンおよびスレオニン残基が明らかにされた.そのうち,140T,および,398Sの2つの部位がより重要なようである.H1受容体リン酸化にはカルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼII,タンパクキナーゼC,タンパクキナーゼG,タンパクキナーゼAなどの関与が示唆される.そして,ダウン調節にはH1受容体を介する同種ダウン調節に加えて,M3ムスカリン受容体やβ2アドレナリン受容体を介する異種ダウン調節の存在を明らかにした.異種の受容体ダウン調節は受容体分子のリン酸化が関与していないようである.それに対して,H1受容体を介するH1受容体遺伝子発現亢進による受容体アップ調節機構の存在が明らかとなった.この機構にはタンパクキナーゼCの関与が示唆される.さらに,異種のH1受容体アップ調節の存在も明らかにしつつある.アレルギーモデルラット鼻粘膜H1受容体mRNAレベルがアレルギー発作により上昇することを見いだしたが,この上昇にはH1受容体遺伝子発現の関与が示唆された.そして,H1受容体自身の刺激とそれ以外のメディエーターの関与が考えられる.また,H1受容体mRNA上昇はデキサメサゾンにより完全に抑制され,この上昇機構がデキサメサゾンの標的であることが明らかとなった.さらに,培養細胞におけるH1受容体誘発性H1受容体遺伝子プロモーター活性の上昇がデキサメサゾンで完全に抑制されることを見いだした.そして,H1受容体遺伝子には多数のイカロスサイト類似部位が見いだされた.
  • 菱沼 滋, 齋藤 政樹
    2005 年 125 巻 5 号 p. 251-258
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/01
    ジャーナル フリー
    ヒスタミンH1受容体は,Gqタンパク質共役型受容体であり,末梢ではアレルギー反応,中枢では覚醒レベル調節などに関与する.細胞表面H1受容体の変化は,このような生体機能の生理的,病理的あるいは薬理的変動に関与すると考えられる.一般に,Gタンパク質共役型受容体は,Gタンパク質共役型受容体キナーゼ(GRK)/プロテインホスファターゼ2A(PP2A)系によって脱感作/再感作されることが知られているが,Ca2+動員反応と共役するGqタンパク質共役型H1受容体の場合には,GRK/PP2A系とCaMキナーゼII(CaMK II)/プロテインホスファターゼ2B(PP2B)系による二重制御機構が関与していると考えられる.即ち,(1)H1受容体がヒスタミンによって刺激されると,細胞内Ca2+濃度が一過性に上昇してCa2+/カルモジュリン(CaM)が活性化され,活性化されたCaMはGRKを阻害することによってH1受容体の細胞内移行を阻害し,H1受容体を細胞表面に留める.(2)一方,CaMは,CaMK IIとPP2Bの活性化を介して細胞表面H1受容体の脱感作および再感作を誘発する.(3)次に,Ca2+ポンプなどによって細胞質Ca2+濃度が低下すると,それまでCa2+/CaMによって抑制されていたGRKが作動を開始し,クラスリン被覆小胞の形成を介してH1受容体の細胞内輸送を誘発する.(4)そして,細胞内に移行したH1受容体は,PP2Aを介した再感作機構によって正常な受容体として細胞膜にリサイクリングされる.以上,細胞表面H1受容体の数や機能は,H1受容体を介したCa2+シグナリングによって巧妙なフィードバック調節を受けることが明らかとなりつつある.H1受容体の制御機構に関する基礎的研究が臨床応用に発展し,医療に貢献できるよう期待したい.
  • 福石 信之, 吉岡 美乃, 赤木 正明
    2005 年 125 巻 5 号 p. 259-264
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/01
    ジャーナル フリー
    肥満細胞は抗原抗体反応によりヒスタミンや脂質メディエーターのみならず,サイトカインやケモカインなどを放出することで,アレルギー・炎症を形成する主な細胞の一つである.近年,肥満細胞の持つ貪食機能がクローズアップされ,それに伴い自然免疫系の細胞としての一面に脚光が集まりつつある.我々は現在ヒト肥満細胞株を用いて,菌体成分暴露におけるToll-like receptorの発現変化,細菌貪食のメカニズム,菌体成分暴露による他の免疫系細胞との関わりの変化,および抗菌ペプチドの発現と肥満細胞への作用を検討している.これらの知見を通じて,肥満細胞は獲得免疫系がIgEを産生した後,そのIgEを表面に捕捉してアレルギー・炎症を引き起こす細胞であるという概念から,IgEなど獲得免疫系の関与なしに外界からの異物の侵入に対して,直接的に防御·排除を行う結果として炎症を惹起しているという別の姿が見えてきた.
  • 石原 研治, Hong JangJa, Zee OkPyo, 大内 和雄
    2005 年 125 巻 5 号 p. 265-270
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/01
    ジャーナル フリー
    気管支喘息などのアレルギー性疾患では,白血球の1つである好酸球が骨髄,末梢血および炎症部位で増加し,炎症部位に浸潤した好酸球は細胞内顆粒を放出することによって組織を傷害すると考えられてきた.しかし,最近,炎症部位に浸潤した好酸球は,炎症の誘発ではなく気道リモデリングに関与しているのではないかということが示唆され,病態形成における好酸球の役割に対する認識は変化しつつある.本稿では,最近の知見をふまえ,アレルギー性炎症における好酸球増多機構と炎症部位での好酸球の役割について述べる.
  • 奈邉 健, 水谷 暢明, 河野 茂勝
    2005 年 125 巻 5 号 p. 271-277
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/01
    ジャーナル フリー
    :アレルギー性鼻炎はくしゃみ,鼻汁分泌亢進および鼻閉を主症状とする典型的なI型アレルギー疾患である.くしゃみおよび鼻汁分泌は抗ヒスタミン薬で強く抑制されるが,患者にとって最も苦痛を強いる鼻閉の治療にはグルココルチコイドが繁用され,これに代わる鼻閉の治療薬が望まれる.我々はスギ花粉を抗原としたモルモットアレルギー性鼻炎モデルを作成し,主として抗原惹起後に誘起される2相性の鼻閉ならびに抗原以外の刺激に対する鼻過敏症の発症メカニズムについて解析し,有効な治療薬の候補について検討した.遅発性の鼻閉はシステイニルロイコトリエン(CysLTs)ならびにトロンボキサン(TX)A2の受容体拮抗薬で強く抑制された.また,低濃度のLTD4およびTXA2類似薬,U-46619の点鼻は感作-惹起動物において相乗的に鼻閉を惹起することから,これらのアラキドン酸代謝物は鼻粘膜の効果器において相乗的な作用で遅発性の鼻閉を惹起している可能性が示唆された.鼻過敏性の発症はB1およびB2受容体に対する拮抗薬で抑制され,さらにこれらの受容体のアゴニストであるdes-Arg9-カリジンおよびブラジキニンの点鼻は感作-惹起動物においていずれも鼻過敏症を惹起することから,本鼻炎症状の発症にはキニン類が大きな役割を演ずる可能性が示唆された.実際の鼻アレルギー患者では,抗原惹起が繰り返され,2相性の鼻閉と鼻過敏症がオーバーラップして発症していることから,これらの鼻閉をコントロールするためには,アラキドン酸代謝物の作用を抑制することに加えて,キニン類の作用を阻害することが有効である可能性が示唆された.
  • 久保 伸夫
    2005 年 125 巻 5 号 p. 279-284
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/01
    ジャーナル フリー
    国民の35%が抗体を持ち,その半数がすでに発症しているスギ・ヒノキ花粉症は日本の国土の15%以上を占めるスギ・ヒノキ森林による季節性疾患であり,早春のわが国の社会生活と生産活動に大きな影響を与え,最近は若年者の患者も急増している.しかし,致死的でなく花粉飛散が終われば軽快するため,疾患としての恐怖感はなく,毎年繰り返すやっかいな自然災害という国民意識が広がっており,各個人における費用対効果で対策が講じられている.抗ヒスタミン薬は花粉症に対する標準的治療薬であるが,抗ヒスタミン薬に社会が求めているものは,疾患の治癒ではなく,安価で即効的に副作用なく症状を制御し,服薬しながら社会活動を維持することである.また通常薬物を服用しない青壮年層に多い花粉症患者は用法や相互作用など投与上の制約への意識も乏しい.つまり,有効性より安全性が優先されるべき薬剤といえ,眠気や認知機能障害,相互作用の有無が臨床上最も問題になる.特に,中枢作用は生産効率のみならず自動車や鉄道,航空機の乗務員では人命に係わる副作用となるが,その出現には極めて個人差が大きく,その理由は不明である.一方,PETによる一連の研究で薬物間での中枢移行性の違いは客観的に評価されるようになってきた.今後はH1受容体やP糖タンパクなどのSNPなど中枢作用の個人差の検討が課題になると思われる.
受賞者講演
  • 篠崎 一哉
    2005 年 125 巻 5 号 p. 285-290
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/01
    ジャーナル フリー
    インスリン抵抗性状態は肥満,耐糖能異常,高インスリン血症,高血圧,脂質代謝異常に密接に関連し,虚血性心疾患や脳血管障害などの動脈硬化症の危険因子となることが大規模な疫学的研究により明らかにされており,その病態の解明が重要な臨床的課題となっている.インスリン抵抗性モデルラットの胸部大動脈を用いて各種の検討を行った結果,内皮プテリジン代謝異常に伴う内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)の活性調節異常がその一因であることを見出した.eNOSの活性型補酵素であるテトラヒドロビオプテリン(BH4)細胞内含量は生体内ではGTPシクロヒドラーゼI(GTP-CH1)を律速酵素とするde novo合成系によってその主な生成量が規定されると考えられている.インスリン抵抗性状態では血管内皮細胞でのインスリン作用の減弱に伴いGTP-CH1の遺伝子発現および酵素活性が低下すること,そしてその結果として組織BH4含量が減少することがeNOS由来のスーパーオキシドアニオン(O2 )産生の増加とNO産生の低下をもたらすことを報告した.さらに,インスリン抵抗性ラットおよびマウスにおけるレニン·アンジオテンシン系の動態とアンジオテンシンIIタイプ1受容体(AT1)受容体の役割について検討した結果,インスリン抵抗性ラットの大動脈ではアンジオテンシンIIに対する過収縮が生じていること,血管内皮細胞ではNAD(P)Hオキシダーゼ由来のO2 産生が増加していることが明らかになった.また,AT1a受容体の欠失マウスを用いた検討から,インスリン抵抗性状態ではAT1a受容体の過剰発現が生じることによりNAD(P)Hオキシダーゼが活性化され血管トーヌスが亢進することを報告した.以上のように,インスリン抵抗性状態における血管機能異常(血管トーヌス·酸化ストレスの亢進や血管内皮機能障害)の機序にeNOSアンカップリングおよびNAD(P)Hオキシダーゼの活性化によるO2 産生増加が関与することが明らかとなった.
私のテーシスから
  • 祖父江 聡, 関口 金雄, 鍋島 俊隆
    2005 年 125 巻 5 号 p. 291-295
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/01
    ジャーナル フリー
    感染症の治療において薬剤が作用するためには,感染している病巣に薬剤が移行して薬理作用を示さなければならない.最近,抗菌薬に関して,動物モデルやヒトにおける薬物動態/薬力学についての検討が行われ,投与量や投与法の根拠となる理論が構築されつつある.抗真菌薬についても,全身に真菌を感染させた動物モデルを用いて薬物動態/薬力学の検討が行われるようになり,フルコナゾール等のトリアゾール系抗真菌薬では血中の濃度時間曲線下面積/最小発育阻止濃度が,深在性真菌症に対する治療効果と最も関連する薬物動態/薬力学パラメータであることが報告されている.皮膚真菌症の治療には,真菌の主な生息部位である角質層への薬物の移行が重要であり,また角質層の主成分であるケラチンに結合していない活性型の存在が治療効果に密接に関連していると考えられる.本研究では,フルコナゾールを投与した時の治療効果が試験管内での活性から推測されるよりもはるかに高い理由を検討するために,モルモットにフルコナゾールを経口投与した後の薬物動態(皮膚内分布),およびヒト角質ケラチンとの結合性をイトラコナゾールおよびグリセオフルビンと比較し,抗真菌薬の皮膚真菌症に対する治療効果に関連する薬物動態/薬力学パラメータについても考察した.フルコナゾールは経口投与後,角質層に速やかに,かつ良好に移行し,ケラチンに非結合の活性型として高濃度に存在することが確認された.このフルコナゾールの優れた皮膚内分布特性がその治療効果に大きく寄与していると考えられた.また,皮膚真菌症に対する治療効果には,深在性真菌症の場合と同様に,活性型の濃度時間曲線下面積/最小発育阻止濃度が関連しており,効果の基準になることが示唆された.
総説
  • 井上 猛
    2005 年 125 巻 5 号 p. 297-300
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/01
    ジャーナル フリー
    社会的機能への影響と高い罹患率を考えると,精神科のみならずそれ以外の臨床科においても,不安障害の早期発見・治療の重要性はもっと認知されるべきである.従来からベンゾジアゼピン系抗不安薬が不安神経症(不安障害のうちパニック障害と全般性不安障害に該当)に用いられ有効であった.しかし,ベンゾジアゼピン系抗不安薬は常用量依・眠気・運転への影響などの問題を有することと,一部の不安障害(特に強迫性障害)には有効とはいえなかったことから,その治療上の限界が指摘され,より安全で有効な抗不安薬が望まれていた.1980年代より,抗うつ薬である選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が様々な不安障害の治療に臨床導入された.SSRIは1999年より本邦でも導入され,うつ病だけでなく一部の不安障害に対する保険適応も認められた.国内外の二重盲検比較試験の結果をまとめると,SSRIはパニック障害の他,全般性不安障害,強迫性障害,社会不安障害,外傷後ストレス障害に有効であることが証明された.SSRIの登場は不安障害の病態に中枢セロトニンが重要な役割をはたしていることを強く示唆している.SSRIの導入により,ベンゾジアゼピン系抗不安薬のような依存性のある薬物を使用しなくてよくなり,治療が長期化することを防ぐことができると期待された.しかし,ベンゾジアゼピン系抗不安薬ほど高頻度ではないにしても10-20%の割合で急激な中止による中止後症候群が出現することや,数%~数十%の割合で性機能障害が惹起されることなどが報告され,安全性の面でSSRIが必ずしも理想的な不安障害の治療薬ではないことが明らかとなった.したがって,SSRIによる治療においても注意深い有害事象のモニターが必要であり,治療終結の際の漸減には十分な注意を払うべきである.
実験技術
  • 伊藤 恒賢, 大和田 一雄, 友池 仁暢
    2005 年 125 巻 5 号 p. 301-306
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/01
    ジャーナル フリー
    血管病対策は21世紀の医療の重要な課題であり,血管病の原因は動脈硬化性変化である.動脈硬化の危険因子としては高コレステロール血症のほうが臨床的に重大である.しかし,虚血性心疾患を発症した全ての患者に高コレステロール血症を認めるわけではなく,むしろ他の危険因子(高トリグリセリド(TG)血症,耐糖能異常,肥満,高血圧等)を同一人が複数併せ持つ方が,虚血性心疾患を発症する頻度が高いことが報告されており,特に高トリグリセリド血症と虚血性心疾患との関係が注目されている.さらに,動脈硬化症を主要所見とする臨床例の中に,食後高脂血症を示す症例が知られており,血管病進展の重篤な危険因子と考えられている.著者らは,動脈硬化に対する血中のコレステロール高値の要因を排除するために,通常(絶食状態)は血中のコレステロール(CHO)とトリグリセリド(TG)が低値であり,食後にTGのみが異常高値を示す家兎(PHT: Postprandial Hyper Triglyceridemia,食後高トリグリセリド血症家兎)の分離に成功した.PHTはCHO代謝異常に依存しない新しい脂質代謝異常のモデル動物である.PHTの食後高トリグリセリド血症は,絶食時に100 mg/dl以下を示し,食後12~24時間で1,000 mg/dl以上のTG値を示す.制限食給餌(120 g/day)下でも食後TG値は1,000 mg/dlを超える.PHTの食後高トリグリセリド血症の発症時期は6ヵ月齢前後から顕著となる.また,PHTの雄性でより食後高トリグリセリド血症が顕著である.PHTの食後の血漿をリポタンパク分析した結果,VLDLの増加が顕著であった.PHTに糖負荷試験を行ったところ,耐糖能異常並びにインスリン抵抗性を認めた.PHTは野生型家兎(日本白色家兎)に比較して体型がやや小型だが,腹腔内脂肪の沈着が顕著である.
新薬紹介総説
  • 大村 剛史, 西川 英一
    2005 年 125 巻 5 号 p. 307-313
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/01
    ジャーナル フリー
    臭化チオトロピウム水和物は,慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療薬として開発された1日1回投与が可能な長時間作用型の抗コリン作用性の気管支拡張剤である.臭化チオトロピウム水和物はムスカリン受容体サブタイプ(M1,M2,M3)に対し,同程度の親和性で結合はするものの,M2受容体に比べ,M1およびM3受容体からの解離が遅い.このことから,kineticsの面では,類薬(臭化イプラトロピウム,臭化オキシトロピウム)と比較して,M1およびM3受容体(特にM3受容体)に高い選択性を示すという特徴が,受容体結合実験ならびに気管標本における収縮実験において示されている.モルモットやイヌを用いたin vivoモデルにおいても,アセチルコリン誘発気管支収縮に対して臭化チオトロピウム水和物は,臭化イプラトロピウムや臭化オキシトロピウムと比べて強力な気管支拡張作用を示すとともに作用持続性でも優れていることが明らかとなっている.欧米および国内で行なわれた臨床試験で,臭化チオトロピウム粉末吸入剤18 µg 1日1回の吸入は1秒量(FEV1)のトラフ値やピークフロー値,呼吸困難をプラセボや臭化イプラトロピウム,臭化オキシトロピウムよりも有意に改善し,QOLの改善やCOPD急性増悪の減少も認められた.さらに,長時間作用型β2刺激薬であるキシナホ酸サルメテロールとの比較試験においても優れた有効性が認められている.以上のことから,臭化チオトロピウム水和物はCOPDにおける呼吸困難などの諸症状の緩解,ならびに運動能力の向上,QOLの改善,急性増悪の予防などを目的としたCOPDの定期的治療に用いられる薬剤として,COPD治療の第一選択薬になると考えられる.
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