発達心理学研究
Online ISSN : 2187-9346
Print ISSN : 0915-9029
原著
幼児は「他者の情動はわからない」ことがわかるのか?:両義的状況手がかり課題を用いて
近藤 龍彰
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2014 年 25 巻 3 号 p. 242-250

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抄録

本研究の目的は,幼児は他者の情動を推測する際,「他者情動はわからない」ことを認識するのか,およびその認識の発達的変化を検討することであった。また,具体的に関わる人物(具体他者)と関わることのない架空の人物(一般他者)であれば,「わからない」認識に違いが見られるのかも検討した。年少児27名(平均月齢=49.81),年中児31名(平均月齢=61.45),年長児34名(平均月齢=73.74)を対象に,自分(自己),友達(具体他者),架空の人物(一般他者)の情動を,両義的状況手がかりから推測する課題を行った。その際,「わからない」ことを示す選択肢(「?」カード)を設定した。その結果,自己条件よりも他者条件で「わからない」反応が多いこと,年長児は年少児よりも「わからない」反応が多いこと,が示された。また,年長児は年中児よりも,一般他者条件において「なぜわからないのか」について言語的に理由づけできていた。このことから,「他者の情動がわからない」ということは,5,6歳ごろから認識され出すこと,具体他者と一般他者では「わからない」認識に質的な違いがあることが示唆された。

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© 2014 一般社団法人 日本発達心理学会
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