日本臨床外科学会雑誌
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原著
バリアンスを利用した胃切術後合併症の早期発見・予測─多施設での検討─
川村 秀樹小笠原 和宏片岡 昭彦武田 圭佐篠原 敏樹松久 忠史高橋 周作服部 優宏正村 裕紀相木 総良菊地 弘展野口 慶太
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2008 年 69 巻 12 号 p. 3053-3060

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抄録

クリティカルパスのバリアンスを利用した合併症の早期発見・予測の可能性を多施設で検討した.札幌厚生病院外科において術後合併症のなかった190例の胃切除例の毎日の鎮痛剤使用回数,最高体温,収縮期血圧最高値と最低値,脈拍最高値,尿量と術後酸素投与日数,食事摂取量をデータベース化し,各指標の90パーセンタイル値をバリアンスの基準値とした.北海道大学第1外科関連11施設に基準値を適合させた場合のバリアンス発生および術後合併症の発生状況について,各施設の連続した10例の胃切除例において調査を依頼した.バリアンスは52.7%(58/110)に発生し,そのうち合併症が発生したものは32.7%(19/58)であった.バリアンスの発生時期は合併症を認識した日より前が73.7%(14/19),同日が26.3%(5/19)であった.バリアンスの発生しなかった症例は47.3%(52/110)でそのうち合併症が発生した症例は5.8%(3/52)であったがいずれも軽微であった.このようなバリアンス基準値を用いることで他の多施設でも合併症の早期発見や予測が可能と思われた.

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© 2008 日本臨床外科学会
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