1994 年 27 巻 7 号 p. 1091-1094
尋常性天疱瘡は種々の弛緩性水疱を生じる難治性の自己免疫疾患であるが, 抗表皮細胞膜抗体の血中における高低が臨床症状と強い相関を示すことが報告されている. 今回, 抗表皮細胞膜抗体が極めて高く, 多臓器不全を呈した尋常性天疱瘡に二重濾過血漿交換療法 (DFPP) を施行し, 救命しえた1例を経験したので報告する. 症例は57歳の女性で, 全身に弛緩性水疱とびらんがあり, ステロイド剤の投与を受けていたが, 症状改善せず多臓器不全の状態で入院した. 皮膚よりの出血, 下血による貧血, 肝機能障害, 皮膚感染症と敗血症, 腎不全, 心不全ならびに呼吸不全の状態であった. 上記病態のため大量のステロイド剤を投与することが困難で, 1万倍以上の高値を示した抗表皮細胞膜抗体除去の目的でDFPPを併用した. 計6回のDFPPを施行していくなかで皮膚病変ならびに臓器不全も次第に軽快し, 救命しえた. 現在, 外来通院中であるが, 少量のステロイド剤の投与下で水疱の出現を認めていない. DFPPは尋常性天疱瘡をはじめとする各種自己免疫疾患に有効で, 難治例に対して積極的に試みられるべき血液浄化療法の一つと思われる.