2006 年 47 巻 3 号 p. 134-139
症例は60歳, 男性. 顔面及び陰茎の発赤及び掻痒感を主訴に近医受診し, 血液検査で糖尿病と軽度の肝機能異常を指摘され当院内科受診. 精査, 加療目的で入院となった. 胆道系酵素の軽度上昇及び, 腹部超音波検査, 腹部CTで肝S8に腫瘤を認め, 胆管細胞癌を疑い肝前区域切除を行った. 術後の病理組織診断では肝臓紫斑症であった. 本症例は糖尿病, 高血圧症はあるものの本症を示唆するような基礎疾患及び薬剤使用歴がないことから, 正常肝に発症した肝臓紫斑症と考えられた. 単発で約5cmと大きな腫瘤状で, 非特異的な画像所見であったため術前診断が困難であった. 肝臓紫斑症は稀な疾患ではあるが蛋白同化ホルモン, 免疫抑制剤の使用に伴い増加が予想されるため, 本症も念頭においた精査が必要である.