2007 年 96 巻 5 号 p. 928-934
メタボリックシンドローム(MetS)は腹部肥満を共通の背景因子として,血圧高値,脂質代謝異常,糖代謝異常を重積し,個々のリスクは軽度でもこれらの重積が動脈硬化性疾患の高リスク群を形成する.各種の疫学研究の結果からMetSでは脳血管疾患や心血管疾患のリスクが2~3倍高いと報告されるが,慢性腎疾患(CKD)の発症のリスクも2~3倍高いと報告されている.MetSの各々の構成因子はMetSの概念が提唱される以前から,CKDの危険因子として認識されていたことから,MetSにおけるCKDのリスク増大は了解可能であるが,個々の危険因子とは独立してMetSが危険因子である可能性があり,MetSの共通の背景因子であるインスリン抵抗性がその機序の一部を成すと考えられる.このインスリン抵抗性は腎機能障害と悪循環を形成しながら,CKDを発症・進展するものと考えられる.