環境科学会誌
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一般論文
日最大電力データからみた東日本地域での夏期のピーク時電力消費の減少動向の分析と考察
菅沼 祐一
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2016 年 29 巻 6 号 p. 296-304

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抄録

電力広域的運営推進機関および電力会社各社では,電力消費の実績をホームページに公表してきている。省エネや節電に向けて,これら公表データを用いた各種分析やそこより得られる知見の蓄積が期待されている。本研究では,東日本地域を対象とし,この公表データを用いて,ピーク時の電力消費である1時間単位でみた1日の中での最大値(日最大電力)の減少率(節電率)を2011(平成23)年以降について年別に算出した。電力需要は気温変動に大きく影響されるため,算出にあたっては気温変動による影響を考慮する手法を用いた。具体的には,比較対象とした2010(平成22)年の同月同週同曜日との日平均気温の差分を横軸とし,比較日との日最大電力の差分の比率を縦軸とする散布図から一次回帰式を導出し,その回帰式のY切片を減少率とした。このY切片は,気温差がなかったとした場合の日最大電力の減少分となる。減少率の算出結果をみると,東北地方,関東地方ともに近年は横ばいもしくは微減の状況にあり,減少率は頭打ちの状況にある。直近の2015(平成27)年夏期について2010(平成22)年比でみると,東北地方,関東地方ともに減少率は11%減であった。震災直後の2011(平成23)年夏期における東北地方での18%減,関東地方での17%減と比べるといずれも減少となっている。これら減少率の動向を踏まえると,引き続きピーク時における電力需要の削減(節電)を進めていくには,新たな取り組みが必要とされる段階となっている。なお本研究で算出した減少率は,震災および経済活動による影響等も含んだ数値であり,需要家による節電対策や節電行動のみを対象とした数値ではない点に留意する必要がある。

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