大気環境学会誌
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排ガス中のPM10/PM2.5測定法に関する研究
インパクタ法の問題点と対策
小暮 信之酒井 茂克田森 行男
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2008 年 43 巻 6 号 p. 340-353

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抄録

我が国において大気中微粒子 (PM10/PM2.5) の対策を推進するためには, 様々な固定発生源においてPM10/PM2.5の排出特性について各種の調査を行う必要がある。このため, 適確な発生源PM10/PM2.5測定法を開発し, 早期に標準化を行うことは極めて重要である。本報では, ドラフト段階にあるISO 23210の低濃度測定用に分類されているインパクタ法を取り上げ, PM10/PM2.5測定上の問題点と対策について, 試験粒子により実験的に検証した。
一連の実験と検討の結果から得られた主な知見は, 以下の通りである。
1) ISOのインパクタ法では, ストレートノズルの2段式インパクタが前提であるが, 我が国の現場においては一般に測定孔が小さいため挿入することが困難であることを考慮して, 90°ベンドノズルの2段式インパクタについて検討した。ダクト内流速約11.5m/s, 粒子濃度約22mg/m3Nの場合, 内径φ6mmの90°ベンドノズル内には, 全捕集粒子量の約30%の付着粒子が生じた。この付着粒子を無視すると, 濃度測定値は大幅に減少するが, 粒径分布測定結果 (平均径と曲線) にはほとんど影響がなかった。一方, PM10/PM2.5測定値では, ストレートノズルの場合と比較して, いずれも約23%低く評価することが分かった。
2) 付着粒子の補正が必要な場合, 吸引ノズルを取り外してノズル全体を秤量した後に粒子を回収し, 粒径分布を求めて各測定値の修正を行うことにより, 濃度, 粒径分布及びPM10/PM2.5も補正可能である。また, 本実験に用いた乾燥粒子や付着性が低い粒子の場合, 瞬間的エアパージによる付着粒子の回収は, 極めて容易でかっ有効である。
3) 一般に, インパクタ法において分級段数が増えれば, 全捕集粒子量は分割される結果、各段で粒子再飛散の量は減少する。実験では, ISO法の2段式インパクタのPM10-2.5分級部からかなり多量の粒子再飛散が生じたが, 中間にPM10-5.0分級部を追加した3段式インパクタでは, 大幅に粒子再飛散が防止できた。また, 捕集板用のろ紙としては, 高温ガス測定や化学分析も可能で, 表面の凹凸が粗い石英繊維製ろ紙が最適である。
4) PM10-2.5の捕集粒子量の限界値は, PM10-2.5の物性 (特に, 分布幅や個数濃度あるいは付着性) や排ガスの性状などによっても異なるため, ISO法のように一律で限界値を定めることは困難である。したがって, 分級段数を増やして粒子の再飛散を抑えるなどの対応が必要と考えられる。

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