2010 年 31 巻 p. 225-237
昭和7年に発行された国定教科書『小学図画』は多くの批判を受け,同11年に改訂された。本稿は,教育実践者や教育現場が『小学図画』のどのような点を批判したのか,また論争が収束に至る過程はどのようなものであったのかについて検討することを目的としている。研究の手続きとしては,当時の師範学校附属小学校教員が執筆した『小学図画』に関連する複数の論文を分析し,当時の論調について考察した上で,京都府師範学校附属小学校教員による論文を時系列に沿って検討する方法をとった。その結果,『小学図画』論争の収束には,国民精神作興の施策に則った日本画的図画教育観が影響したことを読み取ることができた。