抄録
『影(蘇州上空にて)』の鑑賞において,美的特性感受の低回数組に属する生徒はモチーフ・情景の性格づけ(表情性)から「河の流速感」「街並みの密集感」「機上運行感」を感知した。また彼らが『オヴェールの展望』の鑑賞で,描写・彩色法の造形的特徴から身体感覚及び触覚的物質感を感受する割合は,極めて高いことが分かった。両作品を対比鑑賞させることによって,鑑賞能力をも含む広義の直観的把握力におけるアウトロー的だが,無視できない局面が明るみに出た。本稿ではその能力を新たに概念化し,直観的把握力全体の中に位置づけることができた。