抄録
本研究の目的は,教育の機会均等の原則に基づき,離島等のへき地や小規模校において,中学校における美術の授業の質を保障し,豊かな情操を育む美術教育を行うために,ICTを活用した遠隔授業が有用であることを実践を通して検証するものである。特に人口減少が他の地域に比べて進んでいる北海道においては,都市部と郡部における生徒数の格差は大きく,美術の免許を有する教員がいない地域における授業の質の確保を図ることは喫緊の課題である。
本論文では,北海道における美術の免許を保有する教員の配置状況から,質の高い美術の授業をICTを活用した遠隔授業により実現することの必要性を述べるとともに,北海道教育委員会が離島の中学校を指定校として平成28年度に実施した「ICTを活用した遠隔授業導入にかかる調査研究事業」にて実践した取組により効果を検証し,その結果,美術科の教科の特性に応じたICT環境と,質の高い鑑賞の授業により生徒に確実に資質や能力を身に付けることが可能であることを明らかにした。