美術教育学:美術科教育学会誌
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視覚障害者との対話を通した美術作品鑑賞の実践
安斎 勇樹平野 智紀山田 小百合塩瀬 隆之
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2018 年 39 巻 p. 27-38

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抄録

本研究は,視覚障害者を対話のパートナーとした場合の美術鑑賞において,鑑賞の深まりのメカニズムについて明らかにした。実際に視覚障害者をサブナビゲイターとした対話型鑑賞の実践を行い,発話データの分析を行ったところ,視覚情報を共有出来ないがために,美術作品に関する精緻な言語化が動機付けられ,それに伴って精緻な観察が促されることが明らかになった。また,そうして説明された情報に対して,視覚障害者が素朴な疑問を繰り返し投げかけることによって,作品に対する解釈の前提が揺さぶられ,新たな作品の見え方が導かれていたことが明らかになった。また,考察の結果,視覚障害者を対話のパートナーとした美術鑑賞を実施する上では,事前に観察の結果を対話によって共有しやすい作品を選定すること,そして当日は作品鑑賞の時間を十分に確保し,鑑賞中には作品の細部だけに焦点が当たりすぎないようにナビゲイトを工夫するなどの注意点が示唆された。

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© 2018 美術科教育学会
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