2018 年 39 巻 p. 275-287
本研究では,美術鑑賞と知識の関係性について,「美術検定」問題解答データを基本的なテスト理論に基づいて定量的に分析することで明らかにすることを試みた。第一に,領域・問題パターンの相関関係から,従来の美術史の知識問題と,知識を用いた思考・判断を求める「知識・情報の活用問題」で問われる能力は質的に異なること,第二に,級による問題構成の設計と正答率から,一口に知識と言っても級ごとにその力点が異なること,第三に,知識情報の活用問題の正答率と問題パターンの相関関係から,知識を用いた思考・判断にあたっては級によって動員される知識レベルが異なることが示唆された。