美術教育学:美術科教育学会誌
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視覚教材としての教育掛図
明治期における旧開智学校の掛図を対象として
牧野 由理
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2018 年 39 巻 p. 289-300

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抄録
本研究は,明治期の旧開智学校において使用していた教育掛図や備品台帳を対象とし,視覚教材として掛図が与えた影響について検討したものである。明らかになったことは以下3点である。 (1)明治43(1910)年の備品台帳の分析によれば,1,244点の掛図を所蔵していた。10分類のうち最も多い掛図は「地理部」であり,次いで「修身部」,「歴史部」,「動物部」,「国語部」の順である。 (2)備品台帳の「著作者又ハ発売者」の集計によれば,「職員」が198点(16%)の掛図を作成していた。「職員」による掛図は信州地域の地図や歴史,産業など地域に密着していたことや,「松本教育品博覧会」の影響を受けていたことがわかった。 (3)「歴史部」の掛図の一部には,日本画家である岡倉秋水や女子高等師範学校図画講師の森川清が図を手掛けていたものが含まれていた。他教科の教育掛図を通して間接的ではあるが画家の絵に美的感受を受けていたことが示唆される。
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© 2018 美術科教育学会
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