小論では,藤五代策(ふじ・ごよさく)による手工科と理科とを横断する教材の研究過程を分析・考察した。その結果,以下の3点が明らかになった。第1は,理科の教科書に準拠した手工科教材の開発である。従来は,理科の実験器具や物理法則による玩具などの教材は存在したが,教科書を参照することはほとんどなかった。第2は,幼児教育における教材の提案である。それまでの理科にかかわる手工科の教材は,尋常小学校高学年から高等小学校および中学校に課されることが多かったが,幼稚園の手技から扱える教材を検討した。第3は,工業への就業を目的とした教育方法の提案である。学校教育の範疇を超えて,工業における製品開発力を育成する課程を実践した。